18話-8 ホテル内部 ページ8
承太郎はホテル内部へ案内しようとする老婆を引き留めた。確かに、誰も彼女に対して名乗ってはいない……気がする。私自身そんな細かいこと覚えられる性質ではないのだ。
それを言われた彼女は少し戸惑ったように見えたが、すぐにくるりと振り向いて「いやですねぇお客さん」と笑った。
「今さっきそちらの銀髪の方がジョースターさんって呼んだじゃありませんか」
「え、俺！？ ……そういやあ呼んだような気がしないでも……」
「言いましたよォ、客商売を長年やってるから人様の名前をパッとおぼえてしまうんですねェ！ 確かですよォ〜」
そう言ってカラカラと老婆は笑う。……本当にそういうものなのだろうか？ まあ、それを考え出してしまってはキリがないし、そういうものだと思っておこう。……ただ、承太郎の方は納得がいっていない様子だが。
「おかみさんよ、ところでその『左手』はどうしたんだい？」
何気なくポルナレフが老婆の左手を指差す。その手は包帯でぐるぐる巻きになっていた。
「あ……これ？ これは、ヤケドですじゃ……。年のせいですかのォー、うっかり湯をこぼしてしまってのォ。ヒャッヒャッヒャッ」
「年？ 何をおっしゃる！ こーしてみると40くらいに見えるよォ、デート申し込んじゃおーかなぁ。へへ！」
「ヒャヒャ！ からかわないでくだしゃれよお客さん！」
……そのお世辞は無理があると思う。
そんな会話をしつつ、部屋に案内される。部屋の内部はかなりきれいだ。部屋を見回していると、老婆は「ごゆっくり」と言って下がっていった。
「狭い部屋じゃのうー、まあ値段の割にはいい部屋じゃが」
「……それよりベッド5つって……まさか同室ですか？」
そう、そこだ。ベッドが横に5つ並んでいるせいで狭いのだ。それに一応私も女子の端くれ、恥じらいと言うものはある。
「オホンッ、主の名において何もしないと誓うよ。アーメン」
とてつもなく白々しいポルナレフの声が聞こえたのでそっちを睨む。ポルナレフは手を組んでいる。わざとらしすぎてなんだか呆れてくる。
「いや、心配せんでも大丈夫じゃ。さっき他の客はおらんと言っておったし、隣にもう一部屋とっておこう」
「ありがとうございます、そうしていただけると助かります」
「……オホンッオホンッ、こんな怪しい町に一人部屋ってのは危険じゃあないかな！」
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作者名：中条琉乃 | 作成日時：2017年10月10日 22時
