22話-3 奇妙な扉 ページ39
「まあ、僕は準備を済ませたし、雨が降ってるから今日はゆっくりしようかと思ってね。他はみんな外にいるよ」
「そうなの……ねえ花京院、私は準備終わってなくて、今から行かなきゃいけないんだけど」
「だと思ったよ。それもあって僕はここに残ってたんだ」
部屋の前で待ってるよ、と彼は言って部屋を出る。私は外に行く準備を済ませ、部屋を出て花京院と合流した。
しとしと、と雨が降るカラチの街中を歩きながら、出発の準備のための買い物をしていく。飲料水や携帯食料はもちろんのこと、薬などいつ必要になるかわからないものを適当に買っていった。
そして買い物の帰り、私はふと路地裏の方へ視線をやると、ビルに奇妙な両開きの扉が鎮座していた。違和感を感じて、その場で立ち止まってしまう。
「どうしたんだ？」
「あの路地裏の奥の扉、変じゃない？ なんだかちぐはぐに見えるのよ」
「そう、だね。まるで適当に取って付けたみたいだ。……気になるな」
そう言って二人で扉の方へ近づく。近くで見ると尚の事違和感があって、なんというか気持ち悪さを感じる。その気持ちを押さえつけるように扉を観察すると、小さく文字が彫られていることに気づいた。
「ねえ、これ」
「えっと……J、o……ってことは、ここはッ！」
花京院が何かを言う前に扉が勢いよく開く。二人とも小さく彫られた字を読むために扉に寄った姿勢だったため、支えがなくなった体は建物の中へともつれ込む。
「うわっ！」
「わあッ！」
ほぼ同時にそんな声が聞こえて、室内へ入り込んでしまった。急いで起き上がり、扉の外へ出ようとするが、いつの間にか扉は閉じられている。開けようとするが、開かない。見えない力で閉じ込められているかのように。ドアノブを何回も回してみるも扉は開かなかった。
「……やはり、か」
「なによ“やはり”って……原因でもわかったの？」
「原因というか、なんというかではあるけれど……A、今回の狙いは君だ」
「……マジか」
彼曰く、扉に刻んであったのは“Joey's house”……つまり“ジョーイの館”らしい。ジョーイと言われて思い出すのはあのストーカー野郎、そいつがこれを仕組んだのではないか、ってことだ。別人のジョーイさんの可能性もあるので、わからないとしか言いようがない……と思っていた。
その時だった。
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作者名：中条琉乃 | 作成日時：2017年10月10日 22時
