20話-5 人質 ページ26
混乱している私たちは答えられない。彼の話を黙って聞くしかないのだ。
「『スタンド』と『本体』は一心同体！ 『スタンド』を傷つければ本体も傷つく、つまり逆も真なり！ この私を少しでも傷つけてみろッ！ 同時に脳内で私の『スタンド』が私の痛みや苦しみに反応して暴れるのだ！ 同じ場所を数倍の痛みしてお返しする！ もう一度言う！ 貴様らはこの私に指一本触れることはできぬ！」
ニヤニヤと嗤うダンは続けて新たな事実を突きつけた。
「しかも我がスタンド『
言い終わると同時に少年は再びダンのすねを殴る。そしてまたジョセフさんは痛みで足をおさえた。
少年は笑みを浮かべて彼の方へ向く、その心は「殴ったからもう一度お駄賃くれ」ということなのだろう。
「……いつ二回殴っていいと言った？ このガキが……」
彼は子供の顔面を思い切り殴り飛ばす。そして子供を気にすることもなく、私たちの方へ向き直った。
「ま、はっきり言って、私のスタンド『ラバーズ』は力が弱い。髪の毛一本ロクに動かす力さえもない。史上最弱のスタンドさ……。だがね、人間を殺すのに力なんぞいらないのだよ……わかるかね、諸君！ この私がもし交通事故に遭ったり、偶然にも野球のボールがぶつかってきたり、躓いて転んだりしても！ ミスター・ジョースター、あなたの身には何倍ものダメージとなってふりかかっていくのだ……」
そう言いながらダンは左手の指をパキポキと鳴らす。
「ううっ、左手の義手にさえ本物の感覚がッ！」
「そして、10分もすれば脳が食い破られ、エンヤ婆のようになって死ぬ……」
彼は親指でエンヤ婆の死体を指差す。
「……てめえ」
「承太郎落ち着けッ！ バカはよせッ！」
「いいや、こいつに痛みを感じる間を与えず瞬間に殺して見せるぜ」
「やめなさいよ承太郎！ ジョセフさんの事でプッツンするのはわかるけど！」
そもそもそんな荒唐無稽な方法でジョセフさんが救えると思わないのだ。いくらパワーがあってかつ、素早く精密な動きができるとしても直接ラバーズとつながってしまっているのなら本体を殺しても道連れにやられてしまう可能性の方が高い。
今、承太郎は冷静な判断が出来ていない。ここは絶対に引き留めなければ……！
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作者名：中条琉乃 | 作成日時：2017年10月10日 22時
