20話-1 にぎわいのある町 ページ22
車を盗まれ、なんとか馬車を借りてパキスタンのカラチ付近へとたどり着いた。前回の霧の町が閑散としていた、というかそもそも墓場だったものだからこのにぎやかさに少し安心する。
「おっ、ドネル・ケバブがあるぞ。腹ごしらえでもするか」
ドネル・ケバブとは中東方面のハンバーガーみたいなもので、肉の塊を棒に刺して回転させながら表面を焼く。そしてその焼きたての肉をナイフで削ってパンに乗せる食べ物だ。
知識として知ってはいたが、こうして本当にケバブ用の肉の塊を見ると迫力がある。そしてお肉の焼けている匂いや音もおいしそうだ。
「すまない、五人分くれ」
「五個で
「千円？」
ジョセフさんが値段を聞き返すと店の主人は笑顔で頷く。しかしジョセフさんはニンマリと悪い顔をして言い放った。
「千円、カッカッカッカ！ バカにしちゃあいかんよ君ィー、高い高いィ――――っ」
「いくらなら買うね？」
店主がジョセフさんに問う。そこから店主とジョセフさんの値切り合戦が始まった。
「五人で250円にしろ！」
「オッほっほっほっほっほ〜〜っ！ そんな値で売ったらわたしの家族全員飢え死にだもんね――っ」
「じゃあ他の店で買うかな」
「OK！ フレンド、わたし外国人に親切ね。五個700円にするよ」
「300にしろよ」
「600！」
「350！」
「550！」
「400！」
「450！」
「「425！」」
「425！ 買ったッ！」
「バイバイ、サンキューねっ」
とまあ、茶番のようなそうでもないような値切り交渉は幕を閉めた。
そしてジョセフさんが馬車に戻ってくる途中で立ち止まった。その視線は私たち……いや、その背後に注がれている。
「おいッ！ みんな、そのバアさん目を醒ましておるぞ！」
振り向けばエンヤ婆は目を開いてまっすぐに前を見ていた。しかしその様子はどこかおかしい。まるで何かに怯えているような、そんな感じだ。
「わ、わしは！ わしは！ 何もしゃべっておらぬぞッ！ な……なぜお前がわしの前に来る、このエンヤがDIO様のスタンドの秘密をしゃべるとでも思っていたのかッ！」
エンヤ婆は承太郎や私たちに目もくれず、目の前の存在に怯えていた。その視線の先には、さっきの店の店主。彼はつけていたサングラスを取り、かぶっていたターバンを外す。
「……ふふふ、そう思ったのは私ではありませんよ。エンヤ婆」
20話-2 新たな刺客、鋼入りのダン→←19話-10 墓場から次の町へ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：中条琉乃 | 作成日時：2017年10月10日 22時
