18話-3 霧の町 ページ3
そんな会話をしていると、承太郎がふと窓の外をじっと見つめていた。
「どうしたの承太郎」
「……いや、なんでもないぜ」
そうこうしているうちに車は町の中に到着していた。適当な道の端に車を停めて降りる。思った以上に町は広いみたいだ。
「なかなかきれいな町じゃないか。人口は数千人というところか、ホテルもありそうだな」
「……でも、なんだか気味が悪いわね」
町を見回しながら独り言をつぶやく。ジョセフさんの推察通りならもう少し活気があってもいいと思うのだ。でも、この霧の影響で人があまり家から出ていないのかもしれない、と自分で納得しておく。
「あのレストランでホテルはどこか聞きましょう」
ジョセフさんが頷き、レストランへ向かう。
「……しかし、妙に物静かな町だなァ。今までのたいていの町は『ドワァァァ〜〜〜〜』って感じの雑踏だったのによ。こじきたちの『バクシーシ攻撃』も物売りの『安いよフレンド』攻撃もねーぜ」
「霧が出てるせいじゃろう」
ポルナレフも私と似たような意見を持っていたようで、町の住民を見回しながらそう言った。そしてジョセフさんがそれに答える。
「それよりいいか、みんな！ パキスタンより西のイスラム世界じゃ挨拶はこう言うんじゃ。まずスマイルで、
ジョセフさんがレストランの前に立っている男に向けて挨拶をする。だが男は何も答えない。そして男はレストランの入り口の『OPEN』の看板をひっくり返し『CLOSED』にしてしまった。そしてこちらをじっと睨んでいる。
彼の行動の意図が全く分からない、もしかして外部の人間はあまり来るべきではない町なのだろうか。
しかしジョセフさんはめげずに男に話しかける。
「あ……あのじゃな、ハハハ……いきなり閉店にすることもないじゃろう。ちょいと物をたずねるだけじゃよ。この町にホテルはあるかな？ それがどこか聞きたいだけじゃよ。…………もしも〜〜〜〜し」
「＿＿＿＿知らないね」
そう言って男はレストラン内部へ戻っていく。
「え？ おい、ちょいと待て。知らないとはどういう事だ？ この町の者なんだろう？ ホテルはあるのか、ないのか？ それを聞きたいんじゃ」
男は何も答えず去って行った。どういうことだろう、ホテルがあるか知らないなんて……。この町に住んでいるならそれくらい知っていてもおかしくないのに。
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作者名：中条琉乃 | 作成日時：2017年10月10日 22時
