19話-5 作戦開示 ページ16
「どこにも『承太郎』なんて書いてねーぜ。最初に会った時、ジョースターと呼んだ時からあやしいと思っていたのさ。みんなにも俺の名は呼ぶなと言っておいた。……だのに俺の名を知ってるってことはだ、とぼけてんじゃねえ。もうスタンド使いの追手という事がバレてんだよ、ババア」
「そして、承太郎に背後から襲いかかったのも私がばっちり見てたってわけだわ」
そう、今まで私は壁の陰から承太郎と老婆の会話を見ていたのだ。
作戦はすでに始まっていた。ジョセフさんとポルナレフが宿帳に書き込み終わって、私が書き込もうとしたときにスッと承太郎が横から自分の名前を書き始めた。ペンは承太郎にとられてしまって書けないから、承太郎が書いているのをじっと見つめていたのだが、最初に“J”がくるはずなのに彼は“Q”と書いていたのだ。
驚いて承太郎の方へ顔を向ければ、にやりと笑って口パクで「作戦だ」と言っていたので私はあえて何も言わないことにした。そして承太郎からペンを渡され、私も宿帳に名前を書き連ねた。“エンザキ”ではなく“タバサキ”と。実際『煙崎』と書いて『タバサキ』と読む人もいるらしい。
そして私たち二人がこう書いたことに気づいて、花京院も同じく自分の名前の読み方を変えた、と言うわけだ。
さらに私が本を読んだあと、二人でポルナレフを探すことになってからどこの部屋にもおらず、そしてこの部屋の奥からドタバタと騒ぐような音が聞こえたので承太郎が先陣切って入り、私は中にいるであろう老婆の様子をうかがった……と、ここまでが一連の流れ。
「そういうわけだ。残念だったな婆さん、観念しな。“だまし討ち”のペナルティだ……“2対1”で取り押さえさせてもらうぜ」
「……くけけけけ……“2対1”だって？ ケケケケケケ……」
老婆は嗤う。嗤う、嗤う。それはまるで勝ちを確信しているようだった。
「さあどうした、あんたの『スタンド』を見せてこないのか？」
承太郎がそう言った瞬間、この部屋の扉2つから不気味なやつらが出てきた！ その姿はこの町の住人たちだったもので、体にはあの穴ぼこが大量にあったのだ！
「もうすでに見せてるよ――――――ッ！！」
「フン！」
そう言ってスタープラチナを出して住人をブッ飛ばす。さすが承太郎とスタープラチナ、ほとんどのやつらがいなくなった。
しかし、老婆は嗤い続ける。
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作者名：中条琉乃 | 作成日時：2017年10月10日 22時
