19話-4 確認 ページ15
「……なんだトイレか、あの奥のドアだな」
「ええ！ そうですじゃ……トイレはそのドアを入って、目の前のドアですじゃよォオオオオ――――ッ！！」
老婆はハサミを振りかざした。そのハサミは金属製で刺さってしまえば傷は免れないような代物だ。
「そうだ、思い出した。ひとつ聞き忘れたが、婆さんよ」
彼は振り返る。振り返った足に引っかかってしまったのか、老婆はバランスを崩して床に倒れた。
「えっ！ あっ！ グェッ！」
「ん？ おやおやどうした婆さん、急に転んだりして……何かにつまづいたかい？」
「あっ……あっ、危ねえッ！」
彼女の言う通り、もう少しバランスを崩していればハサミの先が老婆の顔に突き刺さるところだった。それに対して彼は少し大げさに言ってのけた。
「おお〜〜、ほんとに危ねえなあ。ハサミなんて持って転ぶとは……。いや、大事故にならなくてよかったぜ、よかったよかった。なあ、婆さん？」
「う、うひい……」
「そうそう、転んだまんまですまねーが質問を続けさせてくれ。……今、どうして俺の名を『承太郎』と呼んだ？ 俺自身は一度も名乗ってないし、誰も俺の名をあんたの前で呼んでないのによ。それを聞きてえんだ」
「グググ……それは……」
「なあ答えてくれ。子供のころ『刑事コロンボ』が好きだったせいか、細かいことが気になると夜も眠れねえ」
そう言われてしまった老婆はゴホゴホとむせながら承太郎の問いに答える。
「な……何を疑ってるんですかァ。そんなの決まってるじゃないですかぁ、“宿帳”ですよぉ〜〜〜〜っ！ 宿帳にさっき一人づつ自分の名をお書きになったじゃあありませぬか。ジョセフ・ジョースターさん、
「ほお、宿帳ってもしかすると『これ』のことか？」
彼は懐から宿帳を取り出した。そして名前の書かれているページをパッと開いて見せる。
「あっ！！」
そこに書かれていたのは“ジョセフ・ジョースター”“ジャン・P・ポルナレフ”――――“花京院 テンメイ”“タバサキ A”“空条 Q太郎”だった。
19話-5 作戦開示→←19話-3 それは本当に尊いものなのか
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作者名：中条琉乃 | 作成日時：2017年10月10日 22時
