雫が三十八粒 ページ40
太宰と中原の周囲の空気が一気に下がったのが分かる。
まだ昼間で暖かい筈だというのにも関わらず、ゾッとする程の空気。
まるで北極にでも居るかのような空気だ。
二人は黙ってお互いを睨み付ける。
太宰は笑っているが目が笑っておらず、中原は無表情で太宰を睨む。
暫くその状態が続き、太宰が口火を切った。
「酷いなあ。私は彼女の髪を切った人間では無いよ。」
へらりと笑って言う太宰を中原は怒りに身を震わせ、太宰の襟首を勢いよく掴んだ。
「ふざけんな!!確かに手前は彼奴の髪を切った奴じゃねぇ。だけどよ、髪を切った"あの女"にそう命令したのは手前だろ!!」
怒りに震える中原を、太宰は黙って見ていた。その目には、何とも思わないと言っているのが誰にでも分かってしまう程、心底興味が無いという目をしている。
その目に呆れたのか、それとも絶望したのか中原は太宰の襟首を放り投げるように離した。
「私個人としてはどんな事情があろうと、彼女を許すことは出来ないし、許さない。今だって、本当はAちゃんとまた引き合わせるなんて事したくなかったんだけどね。」
中原は俯き、顔が髪に隠れてしまい、その時の中原はどんな顔をしていたのか分からなかった。
「手前には絶望した。」
そうポツリと言って、中原は家に入って行った。
太宰は中原が家に入ったのを確認して、髪をグシャリと握って一つ、溜め息を溢した。
「うるさい。」
その時の太宰の表情は、親に怒られて拗ねたよな顔をしていた。
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狼狐(プロフ) - 必殺!一気読み!!▼狼狐は一気読みを繰り出した▼ ←マジです。1時間で読み終えました(遅)感動し過ぎで泣きました。最初悪女に成り切れない悪女ってどゆこと?って思ってましたがこーゆーこととは・・・・!納得です★あぁ、続きが見てぇ・・・ (2022年2月12日 17時) (レス) id: 563f93d61f (このIDを非表示/違反報告)
つくも(プロフ) - 感動のあまり、涙が……泣けました。コレってアニメ化しないんですか?(冗談です)続編が見たいです。あ、でも、コレで終わりってなるのも味的に良いかも……うあ、でも…………見たい!見たいです!!! (2021年7月3日 15時) (レス) id: 3b5cd0d846 (このIDを非表示/違反報告)
ヨル(プロフ) - 味付けのりぃさん» そう言って下さり有り難うございます! (2019年8月9日 13時) (レス) id: 4f3f949d42 (このIDを非表示/違反報告)
味付けのりぃ - あああぁぁぁ…まじで涙出たぁぁぁぁ…いい話すぎる(?)この作品を作ってくれてありがとうございます…!こんなん泣くしかねーわ(( (2019年8月9日 1時) (レス) id: cae02b46bd (このIDを非表示/違反報告)
ヨル(プロフ) - 557*ココナさん» この作品を読んで下さり有り難うございました!! (2019年7月29日 13時) (レス) id: 4f3f949d42 (このIDを非表示/違反報告)
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