３ ページ37
.
バタバタバタッ
廊下を勢いよく走る音が近付いてくる。
「廊下は走らないでねー」
「はーい」
看護師に注意され、調子よく返事をする声が聞こえる。
「…４，３，２，１、ふふっビンゴ」
カウントダウンの最後のタイミングに合わせてちょうど開いた扉に思わず笑いがもれる。
「ごろく…って、何笑ってんすか」
「ふははは」
扉から顔を出した人物も予想に違わず、今度は堪えきれずにしっかりと笑ってしまった。
そんな一郎に、思い切り嫌そうな表情をしながらも、視線はまっすぐ五郎に向かった四郎は、五郎が眠っていることが分かると音を立てないよう、静かにベッドへと歩を進める。
「ごろくん…」
まるで壊れものを扱うかのように、そっと五郎の右手に触れながら弟の名前を呼ぶ姿からは、四郎の複雑な胸中が感じ取れる。
「入院、どのくらいになるんですか…？」
「んー、とりあえず１週間とは言われたな」
「………」
「部活は今忙しいのか？」
「いや…大会もないし特には…」
「じゃあ、明日授業だけ受けたら、あとはずっといてやんな。先生にも聞いといてやっから」
「お願いします」
四郎にとっては不幸中の幸いと言えるのか、明日１日学校に行けば、その後３連休が待っている。
忙しくないとは言え部活がないわけではないだろうが、試合もないのであれば五郎と天秤にかけるまでもないと、四郎が考えているのは明白だ。
だったら気の済むまで、ここで２人一緒にいたらいい。
五郎も長引く不調で精神的にも参ってしまっているから、四郎が隣にいるだけで格段の違いだろう。
「今からちょっと家戻るけど、何か必要なもんあるか？」
「えーと、ゲームと充電器と着替えをお願いします」
「……明日は学校行くんだかんな？」
「………分かってますよ…」
いかにも病室にいることしか考えていないようなリクエストに、無駄だと知りながらも一応釘だけ刺して、一郎は一時病室を後にした。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 154人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にひひ - とっても面白かったです！ありがとうございました。 (2020年8月1日 7時) (
レス) id: 6032ca778f (このIDを非表示/違反報告)
はちこ(プロフ) - にひひさん» お待たせして、申し訳ありません。ご希望に添えたかどうか不安ですが…リクエストありがとうございました。 (2020年7月31日 18時) (レス) id: fdcdcf1450 (このIDを非表示/違反報告)
にひひ - リクエストです。雨の日に発作が起き家の治療でも治らず病院へ発作が収まり家に帰るとまた発作がというお話をお願い致します。発作はどっちも大きいものでお願いします (2020年7月24日 17時) (レス) id: 6032ca778f (このIDを非表示/違反報告)
はちこ(プロフ) - にひひさん» ご期待に添えるものが書けるかどうか分かりませんが、それでもよろしければリクエストお受け出来ます。 (2020年7月23日 21時) (レス) id: fdcdcf1450 (このIDを非表示/違反報告)
にひひ - リクエストいいですか？ (2020年7月23日 15時) (レス) id: 6032ca778f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はちこ | 作成日時：2020年4月23日 20時
