ラブセレナーデ7

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目が覚め瞼を開けると、私の顔を覗き込んでいる篤人と目が合った。
驚く私を見て、篤人が自分の席に体を戻す。



『…ビックリした』
「……よだれ垂らしてたから」
『本当？』
「………本当。恥ずかしいだろうから拭ってあげたら、Aが目を覚まして驚いた」
『ありがとう、篤人』
「…どういたしまして。俺はもう一度寝る。おやすみ」


何故か顔を赤くしている篤人が、私とは反対の方を向いて目を閉じた。








飛行機の窓の外に見えるのは、少しずつ近づいて来る日本の地。




「もう、着くな」

私の後ろから窓の外を覗く篤人の髪の毛が、ふんわりと私の頬を掠める。



ブランケットの下で握られたままの手。
至近距離にきた篤人の香り。
頬に触れる、少しだけ硬い髪の毛。



しばらく篤人と会えないんだな。


そう考えると、少しだけ寂しくなった。






「ん？どうした？」


無意識に篤人を見つめていた様で、それに気づいた篤人が私の顔を覗き込んだ。




『…別に』
「今、ずっと俺の事見てたでしょ」
『…見てない』
「見てたって 笑」
『見てないもん』
「わかった。俺と離れるのが寂しいんでしょ 笑」


笑う篤人に『そうだよ』と言えば、篤人がフっと笑って。
手で顎と口を覆った篤人が私の頭をポンポンと叩き、また逆の方に顔を向けた。






ガタンという衝撃と共に、飛行機が日本の地に降り立った。
シートベルト着用サインが消え、ザワザワと乗客が飛行機を降りる準備を始める。

そんな中、篤人は動く気配がない。



『篤人。降りないの？』
「まだ、混んでるでしょ」
『大丈夫だと思うけど…』
「いや、まだ混んでる」


そう言う篤人は、ブランケットの下でまだ私の手を握っていて。



『本当は、まだ私と離れたくないんでしょ 笑』
「は？」
『図星だ 笑』
「……違うから」
『だって篤人、顔赤いよ 笑』
「…気のせいだって」
『気のせいじゃ無いと思う 笑』


フっと笑った篤人がゆっくりと私に近づいて来れば、瞼は反射的に閉じて。





「……A。何してんの？ここ、飛行機だからね」

目を開けると、篤人が悪戯っぽく笑っていた。








「じゃ、長崎で。お父さんとお母さんに、よろしく」
『うん』
「俺が出た5分後に、飛行機から降りなよ」
『わかった』


繋がれた手を一瞬だけギュッと強く握った篤人が、歩いて行った。






空港のある一角に集っている、たくさんの報道陣の姿と女の子の姿。

「ウッチー！」と女の子の声が、微かに聞こえた。

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