ラブセレナーデ7

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あ。

このソーセージ、前にAに持たせたらお父さんが喜んで食べてたって言ってたな。
お母さんは、チョコレートのついたクッキーが大好きって言ってたっけ。


晴ちゃんは、ドイツビールが一番か。
どうせAの家で飲むんだもんな。もっと、たくさん買ってやるか。



大きな紙袋2個抱えてラウンジに戻れば、『こんなにお土産買ったの？』と、Aが笑う。





「これ、長崎に持って帰って」
『え？うちに？』
「そう」


紙袋の中身を見たAが『あ、お父さんの好物だ 笑。絶対に喜ぶ』と、また笑顔になった。







『今回、日本で絶対に買う物があるんだ』
「何を買うの？」
『蒸し器』
「蒸し器？」
『そう。この前テレビで茶碗蒸しを見て、凄く食べたくなって。色々と見に行ったんだけど、ドイツにはいい蒸し器が無かったの』
「…へぇ」



顔がニヤけそうになり、慌てて手で隠す。






知ってるよ。
あの日の言葉、聞き逃さなかったからね。


大丈夫。あの旅館で用意してくれてるはずだから。
もちろん、他のAの好物もね。



…3連泊。
早く、その日が来ればいい。
一応、毎日違う部屋にしてもらったよ。
部屋風呂も、全部違うからね。
その方が、毎日新鮮でしょ？

…なるべく、小さめの風呂付きの部屋にしてもらったからね。




俺の煩悩など知らずに、隣に座るAは『このクッキー、お母さんが喜ぶ 笑。ありがとう、篤人』と、無邪気に俺に笑顔を向けていた。







『篤人、寝なくていいの？』

機内食を食べ終えたAが、俺を見る。




「うん」
『いつもすぐ寝るのに 笑』
「今回は、試合じゃないからね」
『そっか』
「何の映画見てるの？」
『あのね、これはね、』
「俺も、それ見るかな」
『面白いよ 笑』
「そ」



ブランケットを広げその下でAの手を握れば、俺の手を握り返してくれて。
Aの事が気になりチラチラ見てしまうから、映画の内容なんてサッパリ頭に入らない。
隣でずっと見ていても、Aの目線はモニターから動かない。

悔しくてギュッと手を握り直せば、またAが俺の手を握り返してくれる。





あぁ、幸せだな。


温泉が待ち遠しい。
ダメは無し。その為の部屋風呂。
Aも、きっとわかってくれる。




また顔がニヤケているのに気づき、慌てて口を手で隠した。







『面白かったね、この映画』



Aの屈託の無い笑顔に全く映画を見ていなかった俺は、「…まぁまぁ、かな」としか答えられなかった。

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