６０ 和side ページ9
「車で休ませるよ！空調ガンガン入れて！」
「ニノくん、抱えちゃうね、すぐ楽にしてあげるから」
「黒田さん！保冷剤準備できてます！」
朦朧とする意識の中、少しずつ周りの音が聞こえるようになって
慌てたスタッフさん達の声が響いていた
俺は眩暈が酷くて目を開けられないまま、地面に座り込んだ形で黒田さんに凭れている
あっという間に涼しい車に運ばれて、寝かされた身体をガンガン保冷剤で冷やされた
水分摂らなきゃって自分でも分かってるんだけど、身体が受け付けてくれない
飲んだ分すぐに吐き出しちゃって
黒田さんの指示で右腕には点滴が繋がれた
こんなところで、休んでる場合じゃないのに…
何十分も休憩したら放送時間に間に合わなくなるかも…
ドキドキと不安で鼓動が早まる
でも、黒田さんが優しく落ち着かせてくれて
寝てる場合じゃないと思ってたのに、身体は正直であっという間に眠ってしまった
医療スタッフ「起きたね。そのまま楽にしてて？点滴抜いちゃうね」
和「はい…」
黒田「どう？身体少しは楽になったかな」
和「ん、だいぶ、楽…ありがとうございました」
点滴って凄いや
黒田さんの言った通り、あのまま無理して走るより
点滴してもらって身体の状態戻してから走った方がいいね
８０キロ地点を少し過ぎたから、ブレスレットは紫に変えて
あの人の顔みたいに濃いめのブレスレットが光り輝く
黒田「よし！行こう！」
間もなく１５時
さっきまでの眩暈はなくなって、頭痛もだいぶ治まった
ゆったりとしたペースでマラソンが再開されて
気付いた腰の違和感
マットを敷いてくれてたとは言っても、硬いシートで寝ちゃったのが悪かったか
さっき倒れた時に痛めたのか
激痛、とまではいかないけど、これは時間の問題だなぁ…
長年腰痛と闘ってるから分かる、痛みのレベル
強めの痛み止めも持ってきてるから、無理そうだったらそれに頼ろう
腰を庇って走るとフォームが崩れて、他にも悪影響だから
教わったフォームで走るように心掛けて
黒田「だいじょぶそう？」
和「はい、」
しっかり前を見て、フォームを意識して
左手に輝くブレスレットが目に入ると、心配症で、これでもかってくらい優しいあの人が頭に浮かぶ
顔が濃いから怖く思われがちだけど、優しいんだよ
あの人の優しさには、温かさがあるんだ
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作者名：風月
| 作成日時：2022年10月9日 14時
