５４ 和side ページ4
ジリジリ…
照りつける太陽が、コンクリートに反射して
地面からも熱気を感じる
まだ午前中だというのにこの気温
これは黒田さんも想定外だったみたいで、何度も俺の顔色を確認してくる
信号で止まる度に１口、２口、水分補給をしてるけど
それじゃ追い付かないくらいの汗をかいてると思う
普段そんなに汗をかかないタイプだけど、Tシャツもタオルも汗でビッショリだ
黒田「水分だけじゃなくて、塩分も摂ってね。大丈夫？」
和「ん、めちゃくちゃ暑いっすね…」
黒田「午後はもっと気温上がるみたいだから、休憩多めに入れながら行こう」
日陰に入って小休憩
スポドリ飲んで、塩タブレット食べて
首の後ろをスタッフさんに冷やされる
止まることなく流れる汗をタオルで拭って、気合を入れて立ち上がった
…はずなんだけど、一瞬目の前がブラックアウト
ギュッと目を閉じてやり過ごせば、すぐに元に戻ったんだけど
突然のことで少しだけ内心焦る
この気温の中、現に昨日の夜から５５キロは走ってるんだ
身体に何の影響もないはずない
練習で走った最長距離も超えて、もうすでに未知なる世界を走ってる
自分の身体にどんな異変が起き始めるのか、初めてのことだから予想がつかないんだ
和「はぁ、…はぁ…」
ただ、さっきの立ち眩みは１つの前触れだったようで
これだけ汗かいてるのに、指先が冷たくなってきた気がする
もうすぐ６０キロ地点
相葉さんとの時間ももう少しだ
左手のブレスレットを右手でギュッと押さえると、脳裏に相葉さんの笑顔が浮かんで
「もう少し！頑張れ！」
隣を一緒に走ってくれてるような錯覚に陥る
「１，２！１，２！」
走るリズムを作ってくれながら、軽い足取りで並走してくれる相葉さん
今の俺の目には、相葉さんが見えてるよ
立派な妄想だけど(笑)
黒田「はい、お疲れ様！」
１１時前に６０キロ地点の休憩場に到着
折り畳みの椅子に座らされて、足と肩のマッサージが始まる
同時に首の後ろを冷やされつつ、スタッフさんが数人がかりで風を送ってくれて
暑くて暑くて仕方なかった身体が少しずつ楽になってきた
和「はぁ…ふぅ…」
でも、心なしか気分が悪い気がして、水分は思ったよりも飲めなかった
ブレスレットは黄色に
次は自分自身を見つめ直す２０キロ
頭に浮かんだのはオーディションの日のことだった
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作者名：風月
| 作成日時：2022年10月9日 14時
