行くべき場所はもう既に ページ30
『─────もしもし、Aです』
店を出たAはとある人物に電話を掛けていた。
『こんな時間に電話を掛けてしまってすみません』
『今からお会い出来ませんか─────』
.
時刻は深夜二十三時。
ヨコハマの街が闇に沈み、とある一角だけが賑わう時刻。
そこにAは居た。
ただ歩いていた。
人気が無く、Aの神妙な跫音だけが反響する、そんな処を歩いていた。
辺りは完全なる虚無。
月明かりすら届かない、一面の闇。
その中を小柄な少女が一人、一定のリズムを刻みながら歩いている。
Aが次に足を止めた先。
それは、古びた建物。
今にも崩れ出しそうな雰囲気を醸し出し、足が地面に着くたび軋む音が耳に障る。
入口に入ると、見知った景色が広がる。
中は無惨な平地。
家具や機器、それから人の気配も、随分前に失くなってしまった。
ただの“箱”となってしまったこの建物は、Aに由緒のあるものだった。
“《若紫》”
此処は《若紫》の拠点としていた建物。
二階建ての戸建てで、一般人の住む民家だと疑われても可笑しくない見た目の建物だ。
一階は受付カウンターと応接室、事務室そして医務室があった。
二階は会議室、作業室、そして長──つまりAの両親の執務室があった。
そしてその執務室の一角に子供部屋が位置していた。
そこがAの部屋だった。
Aは、建物内を一通り見て回ると、ある場所で足を止めた。
それは執務室の真ん中にある、机の前だった。
此処で、家族皆で御飯を食べ、家族の会話を交わし、叱られ、笑い合い、両親の本音を聞いた。
そんな思い出の詰まったダイニングテーブル。
この他には、何も家具が見当たらない。
Aの強い希望で、この机だけは動かさず、取り壊さず此処に残してあるのだ。
その机の上に寝転がるA。
ピタリと背中を机に付け、口を開けた。
『………私は………如何すればいい？』
道に迷った少年のような声を発した。
Aは目を瞑り、息を吐いた。
Aの頭の中には自分、母、父、それからもう一人の影が見えた。
誰？
Aは眉間に皺を寄せて頭の中を整理する。
思い出そうとしても思い出すことが出来ない。
Aの知らない人なわけがない。
寧ろ、とても身近な人に違いない。
でもAは思い出せない。
ﾆｬｰｵ
何処からか猫の鳴き声が聞こえた。
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かなこ - 中也❤愛してるぅ (2021年11月19日 14時) (
レス) @page3 id: 84f9a9af20 (このIDを非表示/違反報告)
mi(プロフ) - RENKAさん» 本当ですか！！めっちゃ嬉しいです〜♡ありがとうございます！今後ともよろしくお願いします♡ (2021年11月7日 14時) (レス) id: 008ae2747a (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - 最初から見させていただいてます！読みやすくて面白くて最高です！ (2021年11月7日 1時) (レス) id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
mi(プロフ) - あいでっとさん» コメントありがとうございます！シリーズ3の話がいっぱいになりましたらこちらに移行しますね！もう少しシリーズ3をお楽しみ下さいませ！ (2021年8月23日 17時) (レス) id: 008ae2747a (このIDを非表示/違反報告)
あいでっと(プロフ) - 早く見たい…← (2021年8月23日 17時) (レス) id: 81182bc18e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：myu | 作成日時：2021年8月23日 13時
