闇の花は ページ32
「彼女の力は探偵社の仕事で振るわれるべきものだ」
敦がそう言うと、尾崎はツーッと、綺麗な一筋の涙を流した。
「…矢張り鴎外殿の許可など待たず直ぐに迎えに来るべきであった
この様な偽善の巣にそなたを一秒も置いてはおけぬ！」
尾崎は和傘を放り、鏡花を抱き締めた。
「さぁ戻るぞ、そなたの居場所へ」
「待て…何処に連れて行く」
『敦くん…』
「鏡花ちゃんの居場所は探偵社だ…！」
『駄目！敦くん！』
Aは咄嗟に身体が動いた。
敦を庇うようにして、攻撃を食らった。
『グッ……！！』
「…遅いのぉ、だからAに庇われるのじゃ」
「…夜叉が…もう一体…？！
Aちゃん！！！」
『ゲホッ…敦くん…私は大丈夫だ
それより鏡花を……』
そこまで言うと、金色夜叉が敦の身体を柱ごとぶっ刺した。
「ガハァッ…！」
「矢張り仕事は先に済ますかのぉ、くたばれ小僧」
尾崎が柱に張り付けられている敦の元へやって来た。
「辞めて！！！」
そこで鏡花の声が聞こえた。
「鴎外殿は探偵社員尽くの鏖殺を所望じゃ
然し私はそなたの助命を嘆願し特別に赦された
戻るのじゃ、鏡花」
ワントーン低くなった声で話す尾崎。
「そなたは闇の花、闇の中でしか憩えぬ」
『違う…！』
「私は闇の花じゃない…！！」
倒れ込むAと鏡花はそう言った。
「恨むぞ、小僧
あの子は光に目が眩んでおる
貴様が見せた光じゃ…！」
すると、尾崎は敦の首に刃を添えた。
「小僧無き探偵社は嘸かし居づらかろう…？
そなたの所為で殺されたとあらば尚更」
突然尾崎の手から刀が落ちた。
Aが尾崎の腕を力強く振り払ったのだ。
「ふふふ、A、そなたも私に逆らう気かのぉ？」
Aは先刻刺された腹を抑えながらもう一方の手で短刀を握っていた。
『…敦くん…護られてばかりじゃあいけないよ』
敦はハッとした。
『姐さん、私だって貴女と闘いたくは無い
けど何故か、鏡花と敦くんの事になると幾ら姐さんでも赦せない』
Aの声がワントーン下がった。
「私だって鏡花の事だけは誰にも譲れぬ」
そして二人の闘いが始まった。
「そなたの瞳も汚い光に染っておるぞ」
『汚い光？それは自分自身の事では？』
Aが煽ると、Aの掌に尾崎の刀が刺さった。
『い"ッ…！！！』
尾崎は自分が咄嗟にした行為にハッとした。
「ッ…！…済まんのぅ…A
じゃが今の私は鏡花を連れ戻す目的の元にあるのじゃ…」
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作者名：myu | 作成日時：2021年7月28日 23時
