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後ろに括られた紺色の髪が、さらりと揺れた。






「ん?」




小さな一音に



微笑んだ彼に



柔軟剤の香りに








「ぁ」

女生徒はより一層赤くなる。


そして、動揺したように胸の前で手を合わせ、
しかし、嬉しそうに微笑んだ。







それは、それは、可愛いらしく。









「A君は今日も、格好よくて、素敵ですね……」







本当に、可愛らしく。









「 …………… 」









髪が、揺れる。
目を、伏せる。









「…、うん、ありがとう」

Aは先刻よりも嬉しそうに、笑った。







ザァ_______
止まぬ雨が、耳に響く。








心なしか遠くに響いた靴音に、Aは軽く振り返る。




その正体に気がつき、一瞬体を強張らせ、眉を寄せた。









「ハルヒ___、」


口の中で呟いた言葉に______






______いや______









彼のことば(・・・)に気がつく者など、


誰も、


いない。









______すれ違い 傷つけ合う 少年達の心の闇とは_?









トン、





濡れた冷たい地面に、



濡れた冷たい木。









その温度がもう逃げ場は無いと言っていた。








「もう逃げられないよ、貧乏人」








少し高めの声。

それでも、雨に負けじと響くその声は







「僕に逆らうとどうなるか、よく、覚えておくんだね」









威圧され、圧倒されるには十分なもので








荒い息は空気に冷やされ、白く、淡く







地面に座り込んでしまう彼の頬には泥が飛び




「…… 」




しかし、それよりも視線の先にいる彼の方に意識があるようで


ハルヒは何も言えずに







「……よせ…、光邦」





どの音よりも低い声が通った。


雨音にかき消されるかどうかの音量で、彼は








「人を傷つける度傷つくのは結局、お前自信…」

そんな言葉も

「僕に意見するな崇」





簡単に一蹴されてしまう。




「またおしおきされたいのか」







______やがて彼らを待つ結末とは






背は圧倒的に低いのに





溢れる空気は








______救いの光か







酷く





重く








ハルヒに向けられた笑顔は






「僕は身分不相応な奴が大嫌いなんだよ」







雨の空気をも温かく思える


冷ややかなもので




______それとも







ドクン







その時









ぼろっ







光邦の涙腺が崩壊した



「わあああああん」

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作者名:きゅういち | 作成日時:2020年1月28日 20時

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