78 ページ31
「あ……」
＿＿＿＿＿＿ありえん…
彼等は疲弊していた。
とてつもなく疲弊していた。
なぜかと言えば
「…なるほど…ワニの放し飼いは極めて危険
ピラニア池も要考慮
流水レバーの場所も問題ありか」
かりかりとメモを行う鏡夜の言葉が全てである。
「礼を言おう。いいデータがとれたよ」
しかし、涼しい顔で微笑むのでなんの悪気も無いことが分かる。
「いや、アトラクションはまだ試作段階の物が多くてね」
つまるところ、ホスト部員は実験台である。
相手はあの鏡夜であるものだから
文句を言うに言えない。
ぐ、と全員が言葉に詰まっていると、鏡夜はまた綺麗に微笑み
「ああ、そろそろスコール体験サービスの時間だ。」
ザァァアアアアアアアア
大量の水が頭上から降ってきた。
もはや誰も何も言えまい。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿
_______
座り込みむせる。
「げほっ、げほ、う゛ぅ゛んっ！」
肺に入った水を吐き出しながら、Aは顔をしかめた。
一体何が起こったのだ？と。
先刻までプールサイドに座り、足だけをプールに入れていた筈なのに、今はどうだろう。
全身水浸しである。
「大丈夫〜？Aちゃん」
上からした声にAは眉を垂らし、顔を上げた
「埴之塚先輩こそ、お体大丈夫ですか？」
光邦の髪からパタタと零れた水滴が、Aの腕に落ちる
光邦の髪は水のせいか元からか、光にすかされキラキラ光っている。
「僕は浮き輪だったから大丈夫だよ」
「あーなら問題ないですね。私も水飲んだだけっぽいんで」
心配そうに、すとん。と座り込み、顔を覗きこんで来た光邦にしっかり微笑み返し、
自身の顔の水を拭う。
とそこで初めて、髪が結ばれていない事に気づく。
「おっと」
びちゃびちゃとした髪が首に張り付き、邪魔だなぁ。と思いながらも
光邦がヘアゴムなど携帯していないことは分かっている。
自分が邪魔だと思うだけだ。
特に支障はないので髪をまとめることは諦め、
ふぅ、と息を整えながらAは
それよりも
と首を傾げた
「ここはどこでしょうね？」
「んー、ゴールかなぁ？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 266人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きゅういち | 作成日時：2020年1月28日 20時
