検索窓
今日:126 hit、昨日:52 hit、合計:286,911 hit

51 ページ4

ダンッ




そんな振動と共に、彼は踏み切る。






体育館の光に煌めく汗より、放られたボールに全員が息を飲んで








パシュ_______






キャアアアアアアアア






歓声が、轟いた。






圧倒的に女子の多いその声が体育館に溢れかえる






「さすが常陸院様!!!!」
「桜蘭のエース!!!」






笑顔の二人に、頬を染めた少女達の声量が倍になる








「今決めたのは光くん?馨くん?」
「どっちでもいいわ!」
「どっちも素敵!!!」





きゃーきゃー


黄色い声が飛び交う中、パイプ椅子に腰掛ける片割れに声かける。





「か、馨くんタオルを…」






差し出された柔らかな布をチラリと見て、
彼____




「……僕は光だけど」






_______光は目をそらす。








「あ、ごめんなさ……」
「別にいい、慣れてるから」





女生徒の謝罪を遮り、ボトルの飲み口に口をつけようとした光だが









ピィィィィイイイイイイイ!!!!!!!!!









甲高いホイッスルの音に、刹那目を細め、慌てたように立ち上がり叫ぶ









目に飛び込んできたのは、慌てる大人たちと
ざわめくチームメイト。



そして



膝を抱え、横に倒れる








「馨!!!」






パイプ椅子が転がるのにすら気を止めず、馨の下へ駆け寄り、光が手を伸ばす。



苦しそうな馨に、彼に触れーーーー





「光くん君はダメだ!」





る前に、肩を掴まれる。






「君は試合に」
「だまれ………!!!」






膝を抱える馨よりも切羽詰まった表情の光は、小さく震えていた。





触れなければわからない程のその揺れに、慌てふためく周りは気づかない。






けれど、彼だけは。





「光」





どんなに周りが煩くとも


どんなに荒れた状況でも






馨の声は、馨の声だけは、はっきりと聞こえる。



光の事は、光の事だけは、はっきりと理解できる。






「落ち着くんだ、僕の痛みを感じ取っちゃいけない」






頬に寄せられた馨の手に、光は自分の手を重ねた。


温かさを感じるように、ゆっくりと握るが、荒い息はそのままで






震える光に、ただゆっくりと、諭すように馨は続ける






「いいな、怪我してるのはお前じゃな……」
「馨…」






「無理だ。…痛い…痛いよ馨」





こぼれ落ちた涙に、馨は目を細めるしかなかった。






____お前の痛みは僕の痛み









.



.



.





_______サァ_______









雨が









降っていた。

52→←50



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (92 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
266人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:きゅういち | 作成日時:2020年1月28日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。