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う゛ぅ゛
と小さく呻いているAに、ハルヒは少し怪訝そうに
「大丈夫?」
と声を掛けてやる。
多少表情に難あれど、放置しないあたりがハルヒである。
「高校生になってとんでもない方法で騙された…」
はは、と俯きつつ呟いたAにハルヒは特に表情を変えずに言う。
「うん。自分だって偽物って分かったけど」
「ハルヒ、それは世間一般で言う『トドメ』というやつです。」
宣言通り、ハルヒの言葉をトドメにAは完全に項垂れた。
「ハルヒのばかー」
「ええ」
ド低温の声と共にハルヒを見ながら、
彼女の両肩に腕を乗せるようにして、軽く抱きつくA。
それを迷惑そうに見てハルヒは諦めたように、抵抗はしなかった。
と、そんな二人___厳密にはハルヒ___の元へパタパタとやって来たのは
「ハルヒーウォータースライダー行こうぜーって、A。お前、ちょと見てない間にハルヒに抱きつくな」
「は、うるさい。私は今金持ちの理論に騙されて消沈中なんだよ」
「ハァ?何それ?意味ワカンナイ」
今までの経緯を知らない光にとっては、全く意味の分からない言葉であるから、その返しは正解だろう。
後からやって来た馨はそんな二人のやり取りをスルーして、軽く首を傾げる。
「つーかお前ら水着は?」
濡れた髪からパタパタと溢れる水を鬱陶しそうに拭いながら双子は綺麗にシンクロした動きを見せる。
ハルヒに押し返されて、Aはしぶしぶ離れつつ、自分達の格好を見返す。
確かに、彼等は基本全員が水着を着ていて、自分達は
「私は一応。中に着てる」
パーカーとハーフパンツをその上から着ているだけで、別に水着を着ていない訳ではない。
「え?んじゃあなに?今さらそのオソマツな体型を隠そうとしてるって…」
「光君はマジで一回殴られても文句言わせないよ???」
うん??
二人の間にバチンッと散った火花。
それにハルヒは、はは。と笑って
「泳ぐ気も無いのに着替えるのは面倒だと思う。水遊びならビニールプールで十分だし」
なんてモノグサなヒロインであろう。もはやなんと言って良いか分からないレベルである。
そんな一言に、今度はAが乾いた笑みで
「私はハルヒの水着姿めちゃめちゃ見たかったけどね????」
「そう?」
「そう。」
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作者名:きゅういち | 作成日時:2020年1月28日 20時