33話 ページ35
『……レイナ』
汚い手が伸びてくる。
逃げようと藻掻くけれど、あっちからもこっちからも沢山の手が伸びてきて逃げられない。
『レイナ、愛しているよ』
やめろ、その名前で呼ぶな
その声で、その顔で、その腕で私を抱きしめるな
汚い
気持ちが悪い
『お前は俺の言う通りにしていればいい』
そんなの嫌だ、
『お前は、俺の女なんだから』
嫌だ、
やめろ、
やめてくれ
＿＿貴志正臣、これ以上喋らないでくれ…
・
「……大河、大河!!……大河!!!」
大声で叩き起され、一瞬にして目が覚めた。
起き上がろうとすると頭に痛みが走る。
「大分うなされていたぞ」
頭上には顔を覗き込む柊。
額は汗をかいて前髪が張り付いていた。
さっきのは夢ではない。
記憶だ。
奥の奥にしまい込んだはずの、暗黒の記憶。
「…あ、そっか。倒れたんだっけ」
「貧血みたいだな、常備薬は持ってるか？」
首を横に振る。よく考えてみれば貧血を起こしたのは今日が初めてだった。
里見君に支えられたことを、少しだけ覚えている。
「今、何時」
「22時だ。教室に戻れるか？」
22時。あれから3時間は経っている。
随分寝入ってしまったようだ。
「……宇佐美は自白したの？」
「あぁ。今日の犠牲者は出なかった」
宇佐美が自白したのは意外だった。
彼女はクラスメイトを見殺しにしても自分のプライドは守り抜くタイプの人間だと思っていたからだ。
殺 してないくせに、と悪態をついてみせると柊は苦々しそうに笑った。
「大河」
「…何、説教なら聞かないわよ」
こめかみを手で抑えながら柊の目を見る。
人の心の奥深くまで見透かすような双眸。
「お前はどこまで知ってる？」
何度目になるかわからない質問だ。
何度質問されても答えは同じ。
溜息さえ出てしまう。
「言ってどうなるの？」
言うつもりはないし、協力するつもりも一切ない。
ただ、”利用するだけ”だ。
「……そうか、残念だ」
柊は一言そういうと、
私が寝ているソファにナイフを突き立てた。
若干のデジャヴ。
あぁ、前もこういうことあったな とぼんやり思う。
ソファに横たわる私に、覆い被さるようにしてナイフを突きつける柊。
さながら情事前の恋人のようだ。
「……何回言わせるの。
アンタは誰も殺 せない。
私はナイフ突き立てられたところで怯むような人間じゃないわ」
「あぁ、そうだな。
だが俺は自分の目的を果たすためなら容赦はしない」
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理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！応援してます！！ (2022年8月23日 17時) (
レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
葉紅(プロフ) - もう更新しないんでしょうか？すごく面白いので続きが見たいです。続編と物語の更新楽しみにして待っています (2020年9月27日 0時) (レス) id: 915a610475 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - ヤバイですね！まさかの共犯になるなんて…！面白いです！更新待ってます！ (2020年1月24日 23時) (レス) id: 874e279780 (このIDを非表示/違反報告)
ちーかま - すっご.....。作者様、絶対頭良いやん.....。 (2019年3月16日 10時) (レス) id: 8f9925b559 (このIDを非表示/違反報告)
ナナたん - 超大作ですね！ (2019年3月15日 20時) (レス) id: 0ab40017a4 (このIDを非表示/違反報告)
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