微糖な想い ページ8
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赤いポストの中にあった茶封筒の中には ライブのチケットと『 あまり 』の三文字が書かれた手紙が入っていた。
『 余り 』ぐらい漢字で書けないのだろうか、なんて少し苦笑しながらも素直に伝えない彼が少しだけ擽ったかったのだ。
「 ばーか 」
私が彼と付き合い始めたその日から丁度一年と半年が経とうとしている。一年半なんて特に記念日と設定し、何かをしようというわけではなかったが 見事にそれが彼のライブの日と被ってしまえば少しは気分も落ち込んだ。意地でも本人には言わないつもりであったができる事なら会いたかった。彼の顔を見て「 好き 」だと言って照れさせてやろうなんて計画していたからだ。
Knightsを支援する人達は多い。あっという間に売り切れたチケットに余りなどないはずなのに置いてあるチケットはちゃっかりとステージ真っ正面の席に設置されていた。
本当に愛情の伝え方が変なところで下手くそだなあ。
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凛月推し、そう書かれたうちわを何回見たことか。
少しだけの嫉妬に、彼のライブを見るのは初なんてことで大きな期待に胸が踊る。どんな顔をしているのだろう、とか どんな歌を歌うのだろう、とか。
本番中に寝たりしませんように、なんて不安もほんのひと握り。
会場は思っていたものよりも大きくて、満員とも言える数の観客の期待と熱気が篭っていた。そわそわと気持ちが落ち着かなくて、先程買ったばかりのペンライトの電源を付けるものの一瞬で蛍光色に変わったそれがあまりにも眩しくて慌てて消した。ああ、駄目だライブに不慣れすぎる、なんて今更ライブについて調べてから来なかったことに後悔するのだ。
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ライブが始まれば 凛月くん、と私の最愛の人を呼ぶ声は四方八方から度々聞こえる。ステージの上で歌う彼に向けて振られるペンライトを真似して、私も不格好ながらに一生懸命彼に振り続けた。好き、なんて声も俺も好き なんてファンサも、ペンライトを振ることで聞こえてないふりをしたのだった。本当に私は面倒臭い女なのだ。
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作者名:あんさんぶるparty! x他3人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2017年9月22日 0時