眠りの王子に花束を。【朔間凛月誕】 (ページ3)

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おめでとうって言って。ページ3

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「俺、今日誕生日なの」

「...へえ」

「今日誕生日」

「うん」

「......」

じとり、と何か言いたげに私を見る彼。

さっきまで寝転んでいたからかあちこち跳ねる髪を梳けば、開かれた赤の眼がさらに細くなる。

「...Aは祝ってくれないの？」

「ん～？ていうか凛月くん、葉っぱついてるよ」

「話逸らさないでってば」

葉っぱを取ろうと伸ばした手を引っ張られて、そのまま綺麗に刈り取られた草の上に二人揃って倒れ込んだ。

うわあ、くすぐったい。

よくこんな所で凛月くん寝られるよね。

「A、祝ってよ」

「...死に一歩近付いたね」

「馬鹿なの？」

私の顔の前まで、彼の端正な顔が寄る。

近い、なんて言いながら少し距離をとると、不満そうな表情の凛月くんが見えた。

そんな凛月くんの頭をわしゃわしゃ撫でつつ笑って言う。

「...朔間先輩が祝ってくれるんじゃない？」

「はあ？なに、兄者に祝われても全く嬉しくないんだけど」

「なんでよ、凛月くん朔間先輩大好きでしょ」

「もうほんとやめて、ないから」

本気で嫌そうに顔を顰める彼に、なんだか朔間先輩が可哀想に思えてきた。

...まあ、せっかくの誕生日なんだし凛月くんの好きなことさせてあげたほうがいいかな。
この話題はさよならしよう。

「Aは誕生日忘れてたの？」

「...凛月くんの？」

「そう」

「忘れてた」

「えっ」

「嘘。ちゃんと覚えてたよ、誕生日プレゼントもあるし」

自然とそう言った途端、目が見開かれる。

うん、この顔が見たかったの。

「...A性格悪すぎ」

「そんな私が好きなんでしょ」

「嫌い」

「素直じゃないなあ、もう！」

ニヤニヤ笑う私を睨みつける凛月くん。

こんな凛月くんも好きに思えてしまうなんて、よっぽどだ。

「......おめでとうって言って」

「もちろん。
誕生日おめでとう、これからもよろしく」

「...ありがと」

「わ、照れてる」

「ウザい」

年に一度の特別な日、

これからも私の隣にいてくれますように

なんて、彼の誕生日なのにわがままかな。

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