【utit】坂田さん、私、坂田家なんですが、すみません。今日、死にますね【tnrnskt.】

死ぬまで残り９分 ページ22

『にぃちゃん』

僕は暗くなってしまった雰囲気を壊すために、できるだけ明るい声で話しかけた。
にぃちゃんは僕に不思議そうな表情を向けて、なんですか？と聞いた。

『･･･にぃちゃんは、好きな人おる？』

「好きな人･･･ですか･･･」

僕の言葉に真剣に考えてくれるにぃちゃん。
･･･そういうところも好き。
僕だってにぃちゃんが言ってくれたら、今すぐ抱きしめて僕もだよって言えるのに。
この言ってはいけない２文字を、君に伝えたい。
好きな人がいるとは言ってほしくないけど、いないとも言ってほしくないなんて、本当わがままだって分かってる。
いたら諦めるしかなくなるし、いないなんて恋愛対象じゃないってことにも繋がるから。
･･･どっちも嫌だなぁ･･･

『もしかして･･･いない？』

「･･････そう、ですね･･････」

にぃちゃんはじっと僕のことを見たあと、ニコッと笑った。
どういうことなのか分からず、僕は困惑する。

「いますよ？本当にカッコよくて、希望を与えてくれる、優しい人」

その人のことを思っているのか、さっきよりも優しく微笑みながら話すにぃちゃん。
頬には赤みがかっていて、本当に好きなんだと実感させられる。
ズキズキと痛みだす胸。
誰のことを言っているのか聞きたいけれど、声が出ない。
･･･僕のことだったらいいのに、なんて思っちゃダメですか？

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