検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:49,587 hit

10. BADEND 病んでしまった彼はもう救えない ページ12

*


「……ん」

体が重い。起きたくない。でも、起きないとダメだ。
微かな光で私は目を覚ます。

「……え、なに、これ」

目の前広がるそれはあまりにも酷かった。

「……ここは」

周りは一面コンクリートの壁。壁には窓がひとつだけ。
その窓は鉄の棒で塞いであり、光は僅かにしか入ってこない。
ベットは無造作に布が置かれているだけ。
出口は鍵がかかって出られない。

ここは、ここはまるで――。

「牢屋……?」

その時、後ろから扉を開く音がした。

「起きたんだ」

聞き覚えのある声だった。
この声は……。

「……蓮」
「ん? どうした?」
「どうしたじゃないよっ! ここどこなの!?」
「どこって、見たとおり牢屋だよ」
「なんで、こんなところに」
「なんでって……」

蓮は笑う。不気味に笑う。

「お前を閉じ込めるためにさ。俺から逃げないようにね」
「っ!」

私は必死に逃げようとする。
が、蓮に捕まってしまった。

「だから、逃げちゃダメだってば」
「離してっ」
「痛っ!」

首筋にちくりと痛みが走る。

「暴れないで。おとなしくして? おとなしくしてたら痛いようにはしないから。……ね?」
「っ、」
「うん。いい子だね。そうやっておとなしくしておけば何もしないから。あぁ、でも」
「……?」
「逃げないようにしとかなきゃね」

そう言って蓮は私の右足に手錠をかける。

「なっ!?」
「逃げないように、ね?」

なんで、こんなの蓮じゃないよ! 蓮はこんなことしない!
蓮っ、お願いだから戻ってよ。優しかった頃の蓮に……。

「あぁ、安心して? 食べ物とかはちゃんとやるから」

そう言って蓮は、じゃあねと言うと出て行ってしまった。
私はこれからどうすればいいのだろうか。どう生きていけばいいのだろうか。
このままここで一生暮らせというのだろうか。

「……っ、誰か助けて」

――私の声は誰にも届かなかった。
*

*

*

*

*

*

*

*

*


……あれからどれくらい経っただろうか。
蓮が言ったとうり、食べ物はちゃんと食べさせてくれている。
ほかにも日常生活で必要なことはさせてくれる。

「おはよ。A。はい、朝ごはんだよ。残さず食べてね?」
「……ありがと」
「じゃあ、行くね」

そんな日々が毎日、毎日続いている。
きっとこれからも、ずっと続くのだろう。

……もう、もう救えないんだ。


――病んでしまった彼はもう救えないんだ。


*BADEND

11. HAPPYEND 私は夢の中で生き続ける→←09. 誰か助けて……



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (44 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
24人がお気に入り
設定タグ:ヤンデレ , 依存系 , オリジナル , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

- すんごい面白かったです! (2018年8月31日 21時) (レス) id: 6670beebf5 (このIDを非表示/違反報告)
rio@リナ(プロフ) - いろいろ忙しくて、しばらく更新できませんでした。すみません。そして、今まで読んでくださってありがとうございました! (2015年9月29日 18時) (レス) id: 8ef7d52d8a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ナナ | 作者ホームページ:ナナ  
作成日時:2015年1月17日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。