10. BADEND 病んでしまった彼はもう救えない ページ12
*
「……ん」
体が重い。起きたくない。でも、起きないとダメだ。
微かな光で私は目を覚ます。
「……え、なに、これ」
目の前広がるそれはあまりにも酷かった。
「……ここは」
周りは一面コンクリートの壁。壁には窓がひとつだけ。
その窓は鉄の棒で塞いであり、光は僅かにしか入ってこない。
ベットは無造作に布が置かれているだけ。
出口は鍵がかかって出られない。
ここは、ここはまるで――。
「牢屋……?」
その時、後ろから扉を開く音がした。
「起きたんだ」
聞き覚えのある声だった。
この声は……。
「……蓮」
「ん? どうした?」
「どうしたじゃないよっ! ここどこなの!?」
「どこって、見たとおり牢屋だよ」
「なんで、こんなところに」
「なんでって……」
蓮は笑う。不気味に笑う。
「お前を閉じ込めるためにさ。俺から逃げないようにね」
「っ!」
私は必死に逃げようとする。
が、蓮に捕まってしまった。
「だから、逃げちゃダメだってば」
「離してっ」
「痛っ!」
首筋にちくりと痛みが走る。
「暴れないで。おとなしくして? おとなしくしてたら痛いようにはしないから。……ね?」
「っ、」
「うん。いい子だね。そうやっておとなしくしておけば何もしないから。あぁ、でも」
「……?」
「逃げないようにしとかなきゃね」
そう言って蓮は私の右足に手錠をかける。
「なっ!?」
「逃げないように、ね?」
なんで、こんなの蓮じゃないよ! 蓮はこんなことしない!
蓮っ、お願いだから戻ってよ。優しかった頃の蓮に……。
「あぁ、安心して? 食べ物とかはちゃんとやるから」
そう言って蓮は、じゃあねと言うと出て行ってしまった。
私はこれからどうすればいいのだろうか。どう生きていけばいいのだろうか。
このままここで一生暮らせというのだろうか。
「……っ、誰か助けて」
――私の声は誰にも届かなかった。
*
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*
*
……あれからどれくらい経っただろうか。
蓮が言ったとうり、食べ物はちゃんと食べさせてくれている。
ほかにも日常生活で必要なことはさせてくれる。
「おはよ。A。はい、朝ごはんだよ。残さず食べてね?」
「……ありがと」
「じゃあ、行くね」
そんな日々が毎日、毎日続いている。
きっとこれからも、ずっと続くのだろう。
……もう、もう救えないんだ。
――病んでしまった彼はもう救えないんだ。
*BADEND
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雛 - すんごい面白かったです! (2018年8月31日 21時) (レス) id: 6670beebf5 (このIDを非表示/違反報告)
rio@リナ(プロフ) - いろいろ忙しくて、しばらく更新できませんでした。すみません。そして、今まで読んでくださってありがとうございました! (2015年9月29日 18時) (レス) id: 8ef7d52d8a (このIDを非表示/違反報告)
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