抱 き し め て 【神威】

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「ごめんね」





そう呟いて
勢いよくナイフを自分の首元へ






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………刺す、はずだった。








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──── キィィイイン…




「何やってんノ！！」







「……………っ、か、神威！」







いち早く、神威が私の手の
小刀を払い飛ばした






手首を掴まれた私は
ぎっと彼を睨みつけた





だけど、彼から放たれる
殺気のほうが私を圧倒して
小さくなるのは私のほうだった






「…………お前が死んで
琥珀の怪我が治るとでも思ってんの？」






「…………」





「そんなことしたら
琥珀が起きたとき、お前を追って
自分も死のうとするかもしれねーじゃん」





いつもと違うはちゃらけた声でなくて
低い声に思わず返す言葉も見つからず







「Aの過去に何があったか
なんて俺にはわからない




………だけど、幸せじゃないって
そう思ってるんなら間違いだ






お前には琥珀がいる







お前を幸せにしてくれるやつだって
この世の中にたくさんいる」






「…………」






それでも
私は………







「この薬、夜兎専用の医師が
作ってくれたンだ


これで目を覚ますかどうか
わからないけど、





これにかけてみる価値は高いヨ」






二粒の薬を見せる神威に
目を見開く






神威はベッドで眠る琥珀に
近づいてそれを口にいれた


ごくんとそれを飲み込んだ琥珀








「……それじゃ、俺行くから




死のうとか変なこと考えるなヨ」






そう言って踵を返す
神威の腕を握って







「行かないで」






呟いていた







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