抱 き し め て 【神威】

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「あの日、姉ちゃんが戻って来たとき
一人で両手は血にまみれてたんだ」




「……」




「ぼろぼろに泣きじゃくっていた姉ちゃんは
潤兄が死んだって俺に言った


俺だって最初は信じられなかったよ


村で1番強いって言われてた男だもん」






真剣な瞳で神威が俺の話を聞く






姉ちゃんのためにこんなにも真剣になる姿初めてかもしれない







「………ねえ初めて阿伏兎のおっちゃんがここに連れて来たときのことおぼえてる？」





「あ、うん。覚えてる。
二人して俺を見て………

顔を強張らせてたよネ



Aに限ってはあのとき
すごいなきそうな顔をして……」





俺も覚えてる



小さかった俺だけど
初めて神威に会って話をしたとき




いや、声を聞いたときだったか






「神威と潤兄って声が似てるんだよ」





「は？」





「だから、かもしれないけど。
神威のこといやいや言ってたのも
潤兄と重ねて"また失う"って思ってるからかも」






俺だってまだ
姉ちゃんのこと全部知ってるとは限らない






俺にもわからないことだってある






黒兎と姉ちゃんの間に何があったのか
俺には全然わからない





それを知ってるのは姉ちゃんだけ







「…………けど、俺は
神威が姉ちゃんのこと本気で好きって
言ってくれたあのときから応援してるつもりだから




でも、姉ちゃんを泣かしたら俺は






いくら神威だからって







許さねーから」







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