いつだってあいつは私のヒーローじゃなかった【あんスタ】 (ページ10)

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「ヒーローショウ？」

「ああ、一緒に見に行かないか！？」

昼休み。
例のごとく、ジャージ姿で教室現れた守沢は、その手に2枚のチケットを持っていた。
どうやら守沢は特撮ヒーローが好きらしい。
このヒーローがどうとか、あの必殺技がカッコいいだとか、私にはよくわからないことを夢中で語る姿は子供っぽくて、キラキラしている。

……でも。

「ごめん、この日は塾があるから無理だ」

「ええっ！？そこを何とか！！」

「いや、そんなこと言われても」

受験のために春から通っている塾は時間を変えることができない。まさか、守沢と遊びに行くために塾を休むなんてのもあり得ない。

だけど、心底悲しそうに項垂れるこいつを可哀想だと……申し訳ないなと思わなくもなかった。完全にこいつのペースに飲まれている気がしないでもないけど。

「……わかった。間に合うかわからないけど」

「ほ、ほんとか！！」

「うん。この遊園地近いし、塾から直行したらギリギリ間に合うかもしれない」

不確定な約束なのに、守沢は大いに喜んでくれた。
こんな反応をされたら、やっぱり間に合いませんなんて言えなくなったじゃないか。

「じゃあ今週末、キラキラ遊園地で待っているからな！」

「わ、わかった」

「楽しみだなあ！！」

本当に、自分らしくない。
普段なら、塾の授業が終わった後は復習して先生に質問しに行って、その後は予習をするのに。
ただ、守沢が嬉しそうにしていることに、喜ばしい感情を持っていることは自分でもわかっていた。

たまには息抜きも必要だし、まあいいか。

「私、次移動教室だからもう行くね」

「あ、ああ」

次の授業が始まる10分前となり、授業の準備をしながら守沢にも自分の教室へ戻ることを催促する。

「中村」

すると神妙な面持ちで名前を呼ばれ、思わず手を止める。

「本当に、困ってないんだな……？」

「は？」

一瞬、突然何を言っているのかと戸惑い、すぐに今朝のことを思い出した。

「困ってないよ。気にしてもないし、逆にあんたに気にされるのが1番困るから」

「そうか……」

守沢の持つ感情は、多分普通の、世間一般的なものなんだろうなって思う。
私が泣いて、傷ついて、助けを求めたらこいつはいくらでも解決してくれそうだが、何せ本当に困っていないからやりづらそうだなって思う。

「何かあったら話してくれよ」

その大きすぎる優しさは、私には必要のないものだった。

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