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思い出すのは、中学二年生の夏。

焼けるようなアスファルトの上で、私はただひたすらに突っ立っていた。



「俺、ずっと前から君のことが気になっててさ。俺と付き合ってくれないかな」



時折キザな仕草をまじえ、いかにもな表情で愛の言葉を囁くそいつは、クラスで一番顔が良いと有名な男だった。
その顔は自信に満ち溢れ、今にでも「俺に告白されたことを光栄に思え」と言い出しそうだ。

まだ幼稚な心が捨てきれなかった私は、そんな阿呆に盛大なしかめっ面をおみまいしてやる。



「誰があんたなんかと付き合うか」



この返答は今でも後悔している。大人げなかった。

ナルシスト野郎は顔を真っ赤にし、逃げるように教室に戻って行った。
あのさ、同じクラスだから逃げれないんだけど。

私は知っていたんだ。
あいつは本気じゃない。クラスの男子とゲームをして、負けたから私に告白しに来ただけ。

中学生の恋愛なんて、そんなものだと思う。
誰かを好きになって、告白して、両思いでもそうでなくても付き合って、飽きたら無駄にシリアスなムード出して別れる。
遊びの延長上にあるもの。

そんなくだらないことして何が楽しいのか、と私はいつも思っていた。中学二年生にして、私の心はひん曲がっていたのだから。



「…………戻ろう」



授業開始まではまだ余裕がある。
しかし、こんなくクソ暑いところにこれ以上いられないと教室に戻ろうとして、私は近くから聞こえてくる声に目を丸くした。



「ふざけるな!!!」



体育館裏の狭い道に響いたのは、男子の声。
喧嘩か、いじめか、どちらにせよ面倒事が起きているということだけは理解出来る。

そそくさと帰ろうとして、そんな訳にも行かなくなってしまったことに眉をひそめた。
視界の端にちらりと映ったのは、生活指導担当のめちゃくちゃ怖い教師、鬼村だ。

草むしりに熱中している鬼村は、幸いにも喧騒には気づいていないよう。
しかし、昇降口に戻るためには鬼村の前を通るのは絶対条件。
私の存在に気づけば怒鳴り声にも気づき、そのまま流れるように関係者にされるだろう。

「先生、体育館裏で喧嘩が……!!」なんて一芝居打ってみるか? いや、私はそんなキャラじゃない。

悠長に考えていると、今度は本格的にまずい音が聞こえてきた。



「てんめぇ、!!」

「くっ……」



人を殴ったような鈍い音と、叫び声。

……………ああ、面倒だ。



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りつ@鉛筆 #アダマリLOVE(プロフ) - 急に失礼します癖に刺さりました。 (2022年8月29日 20時) (レス) @page10 id: 6f6f2e1e89 (このIDを非表示/違反報告)
雪月詠 - 急にすみません大好きです() (2022年7月8日 19時) (レス) @page10 id: ec1ca7135a (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - 急にすいません好きです() (2022年7月4日 18時) (レス) @page10 id: 6e1901c539 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とわね | 作成日時:2022年6月27日 1時

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