13話 ページ14
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ワイルドエリア上空。
天候は晴れ。湿度もそこまで高くない。
快適な散策日和だ。
「あ、キバナくん」
フライゴンに乗ってパトロールしている俺を誰かが呼ぶ。
よく見ると木々の隙間からAが手を振っていた。
地面に降りて、木の上にいる彼女へ腕を伸ばす。
キバナ「よぉ。木の実集めてんの？」
「今日は豊作だよ〜。……その腕なに？」
キバナ「降りるの手伝ってあげようと思って♡」
「自分で降りれる！」
ちょっとからかうだけでガーディみたいに
がうがう吠える。
オレサマに心乱されることなんて無いであろう
いつものテンションが妙に楽しくて、やめられない。
Aはフードの中に木の実を詰め込んで
器用に木から飛び降りた。
その手にはなにか丸いものが抱えられている。
キバナ「…ん？タマゴ？落ちてたのか？」
「んーん。ダンデ君に託されたの」
キバナ「ふーん…ダンデがねぇ。
……それって、あいつの家泊まった時？」
「え？うん。知ってたんだ」
けろりと答えるA。
本当にやましい事なんてひとつもなかったのだろう。
…Aらしいな。
キバナ「ケッ。2人は内緒でお泊まり会かよ！」
「はは、キバナくんそんなタイプだっけ？」
キバナ「性格は『さみしがりや』だぜ」
「『ひねくれもの』の間違いじゃない？」
キバナ「なんだと〜ッ！」
ワンパチの頭を撫でるみたいにわしゃわしゃ髪を混ぜれば
「ぎゃー！」なんて笑いながら逃げていく。
キバナ「なぁ」
「ん？」
キバナ「今度はオレサマの家泊まる？」
言った直後、俺は脳内で膝から崩れ落ち、頭を抱えた。
オレ様は一体なにを…！
ダンデに触発されたのか？
お嫁さんに行く前の仮にも女の子である
Aを泊まりに誘うなんて…!!
ドラゴンストームと呼ばれるこのオレ様が!!
ファンにバレでもしたものなら……
「泊まっていいの？」
キバナ「えっ、いいの？」
「え？」
キバナ「ん？」
「……？」
キバナ「……」
沈黙が流れる。
思わず2度見してしまう俺に「冗談だった？」と
困ったふうに首を傾げるA。
キバナ「……泊まる？」
「そうさせてもらえたら有難いなって」
この子のためにも、とタマゴを撫でるA。
脳内では崩れ落ちていた『脳内キバナ』が勢いよく立ち上がり、
天に向かって拳を高々と掲げていた。
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作者名：曙ぼあ | 作成日時：2023年9月11日 21時
