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第14話 ページ15

その日の夜も私は一人で出かける。

銀さんには何時になるかわからないから先に寝ていていいよと伝えて。

夜は好きだ。

昔、ミツバ姉さんと沖田総悟と月を見ながらお団子を食べた。

三人で蛍も見に行った。

一緒にお鍋パーティなんてこともした。

夜には夜の思い出がある。

「ミツバ姉さん」

人気のない静かな通りで立ち止まり月を見上げてボソッと言う。

「見てるかな?ミツバ姉さん。私は元気だよ」

お団子を食べた日も、そしてミツバ姉さんが亡くなった日もこんなにきれいな満月の日だったね。

「私、頑張るから。見ててね」

「お前、誰に向かって話してんだ?」

ビクッ

いつの間にか私の後ろに人が立っていた。

えっ、この距離に近づかれて気づかないなんて私もまだまだだな。

その人がだれかなんて私には関係ない。どうせ知らない人だし、向こうもきっと暇つぶしとかで話しかけたのだろう。

「誰、そうですね。お空にいる大切な人に向かって、ですかね?」

後ろを振り向いて答えた。

その人は男の人にしては珍しい艶やかな着物を着て煙管を加えていた。

雰囲気も不思議で普通の人のようには思えなかった。

「ほお。亡くなった人か?」

「ええ。とても、とても大切な方だったんです」

「そうか。声、届いてるといいな」

「はい」

私はなぜかその人と近くのベンチに座り、空を見上げていた。

「よければ、思い出話をしてもいいですか?」

なぜだかわからないけどこの人に聞いてもらいたかった。楽しかったころの話を。

「ああ」

返事は短かったけど聞いてくれるようで安心した。

「昔、私の面倒を見てくださった近所のお姉さんがいたんです」

「…」

その人はただ黙って話を聞いてくれた。

その人と、その弟とたくさんのことをしたと話した。

スイカわりをしたこと、蛍を見たこと、一緒に年を越したこと。

そんなくだらない話でその人にとっては関係ない話なのに聞いてくれた。

「その弟はあるとき、私と姉さんを置いて出て行ってしまったんです」

「…」

「それから姉さんと二人でたくさんのことをしました。たくさんの思い出ができました。それから数年後にやっと姉さんの結婚が決まったんです」

長い長い話をした。

結婚が決まったん姉さんは江戸に出てきたけど結婚することなく亡くなってしまったのだと。

「せめて、姉さんの花嫁姿が見られたら…」

その人は何も言わず私の頭を撫でてくれた。

その手は暖かくて少しだけ、ミツバ姉さんに似ていた。

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いずみ(プロフ) - 沖田夕重さん» 読んでいただきありがとうございます。亀更新ですがこれからも読んでくださると嬉しいです! (2019年3月25日 20時) (レス) id: ce54617277 (このIDを非表示/違反報告)
沖田夕重(プロフ) - とても面白いです!夢主ちゃんが憎めなくて魅力的なキャラだと思います。更新頑張ってください! (2019年3月25日 20時) (レス) id: e33e8487ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いずみ | 作成日時:2019年3月5日 16時

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