蒼い雛鳥 ①【原神】 (ページ22)

今日:15 hit、昨日:84 hit、合計:8,117 hit

. ページ22

.

蒸籠(せいろ)からいい匂いが漂ってきた。
蓋を取ると旅人とパイモンが口を揃えてこう言った。

空・パイモン
「「美味しそう…！」」

『久しぶりに作ったから、あんまり自信が無いんだけど…
　味見をお願いしてもいいかな？』

パイモン
「いいのか！いただきます！」

蒸す時間も味付けも覚えていた通りに作ってみた。

だが、料理をしたのは何千年も昔のことで、
味には不安しか無い。
美味しくできていたらいいな…。

そう考えながら二人の様子を見守った。
すると…

空・パイモン
「「美味しい！！」」

パイモン
「外の皮はもちもちで、中の餡はエビの香りが広がって…
　とっても美味しいぞ！」

『それはよかった、
　料理なんて何千年振りだから心配してたんだけど… 』

空
「 …ずっと思ってたんですけど、
　Aさんってお幾つなんですか？」

『 …4000年くらいかな、細かい数字は覚えてないんだ。』

パイモン
「よ、よ、よ…、4000年！！？」

『 …昔話はこれくらいにして、

　旅人、料理を作っててくれないかな。
　私は料理人に会って、杏仁豆腐をお願いしてくるよ。』

.

.

.

.

.

料理人を探してから数分。
ベランダで腕を組んでいるガタイのいい男性が見えた。

さっき厨房から出てきた人で…間違いない。

『こんにちは、杏仁豆腐を一つお願いしたいんだけど… 』

言笑
「休憩中だ、邪魔しないでくれ。」

私が話し掛けると目を合わさずにそう述べた。
どうやら男性は機嫌があまり良くないらしい。

何か厨房に戻れない訳があるのだろうか。
それとも…
この男性が怯えている様子に関係があるのだろうか。

暫くの間、
何とか杏仁豆腐を作ってもらおうと声を掛けたが、
男性は見向きもせず頷いてくれない。

…こうなったら、仕方ない。

『 …何をそんなに怯えているの？』

言笑
「！」

彼が私の方を向いた瞬間、
私の周りに幾つもの雫が現れ、蒼い仙気が漂う。

言笑
「 …き、君は、一体…！？」

『水は記憶を持つ…。
　この旅館と貴方の記憶、覗かせてもらうよ。』