蒼い雛鳥 ①【原神】 (ページ21)

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望舒旅館 ───
人知れず璃月を護る夜叉の仙人、魈が居る場所だ。

彼に会うのも幾千年振りだ。

会いたいと思っていたが…
彼もそう思っているとは限らない。

私は怖いんだ…彼に拒絶されることが。

望舒旅館に辿り着いた私たちは、
魈に会うため旅館内を歩き、探していた。

しかし、あの魈のことだ。
旅人の話を聞かずに立ち去ってしまうだろう。

" 杏仁豆腐 " を作ってあげるべきか…？
それとも " 明月の玉子 " の方がいいかな。

どちらにせよ…
料理を作って奉納した方が道理に合っている。

『旅人、パイモン、魈はテラスにいると思う。
　二人で探してきて欲しいんだけど… 』

パイモン
「それはいいけど、Aは会いに行かないのか？」

『私は後で会うよ、厨房で待ってるからよろしくね。』

パイモン
「分かった！行こうぜ空！」

空
「うん」

二人と別れてから、厨房へと足を進める。

そこには料理人と見られる男性が、
そそくさと何処かへ向かう姿が見られた。

…どうしたんだろう、休憩かな。

杏仁豆腐を作って欲しいというお願いは、
後で頼むことになりそうだ。

暫く厨房近くの壁に寄り掛かっていると、
私を呼ぶ声が聞こえた。

パイモン
「 Aー！」

『おかえり、魈には会えた？』

空
「会えたけど… 」

パイモン
「全然話を聞いてくれなかったぞ！」

『 …やっぱり。
　旅人、得意な手料理はある？』

空
「 …" 満足サラダ " かな」

『うん、いい料理だね。』

パイモン
「料理なんて作ってどうするんだ？」

『魈に奉納して姿を現してもらうの。
　昔から、仙人に食を奉納する習慣があったんだ。』

パイモン
「つまり…美味しいもので仙人を誘き出すってことか！」

『 …まぁ、間違いではないかな』

パイモン
「 Aは何を作るんだ？」

『私は… " 明月の玉子 " かな。』

パイモン
「名前を聞いただけで涎(よだれ)が出てきたぞ… 」

『あはは…、ちょっと待ってて。』

私は少し厨房を借りることにした。

卵と小麦粉から作った皮に、
エビと魚肉等を混ぜた餡を包む。
その上にエビ一匹を丸ごと載せてから蒸す。

この料理は昔、
私が帝君や魈を始めとする仙人たちに振る舞った料理。

懐かしい匂いが厨房に流れる。
魈は…この味を覚えているのかな。