木槿のふたり (ページ17)

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親友の母の顔ページ17

"ブーッブーッ"

「んん…」
携帯のバイブで目が覚める。

＊
「はい…」
「あ、もしもし？A？」
「菜々、電話大丈夫なの？」
「うん、もう朝から暇でさ～」

産後とは思えないカラッとした声で、元気そうな菜々。
「なんかA、今起きましたって声してる！もうお昼過ぎだよ！」なんてもうぜーんぶ菜々にはバレバレで。

「今日時間あるなら病院きてよ」
「いいの？行く行く！」
「待ってるよー」
＊

そこから急いで出かける準備をして。
菜々に「赤ちゃんできた」と報告されてからというもの、色んなところで買っていたベビーグッズたちを抱えて、病院へ向かった。

"コンコンッ"と部屋のドアをたたくと、中から「どうぞ～」と菜々の声。

「菜々～、お疲れさま！」
「いや～もう筋肉痛すごくって…」
ベッドに座っている菜々の横には、小さな小さなベビちゃん。

「ち、ちっちゃい…かわいいぃ～！」
スヤスヤと眠っているベビちゃんは、小さな手でぎゅっとガーゼを握っている。

「産んだら可愛すぎて痛みなんて忘れるよ、て言われたけど、本当そうなんだよ、びっくり」
ね～、ってベビちゃんの顔を愛おしそうに眺める菜々は、紛れもなくお母さんで。

学生の頃からずっと一緒だった菜々の、見たこともない母の顔に、ウルッとしてしまう。

「なんでAが泣いてるの！(笑)」
「だってさぁ～…！」

嬉しいんだよ。良かったね、菜々。

「私はあなたに貢ぐオバさんになるからね～何でも買ってあげちゃうからね～」とベビちゃんに話しかけたら、「やめてよ(笑)」と菜々に笑われた。

「そういえば、先輩は？」
「あ、正人は今うちの両親を迎えに行ってくれてて」
「そっか」
絶対親バカになるよ～！なんて笑いながら、ベビちゃんのフワフワした手に触れる。はぁ、可愛い。

「ところでさ、正人との仕事はどう？」
「それがさ、色々想像以上で…」
「忙しそうだよね、今打ち合わせ期間でしょ？もう松潤には会った？」
「うん、会ったよ」
そう言うと、「いいな～やっぱり実物はカッコいい？！」と興味津々の菜々。

なんだか昨日の出来事を思い出してしまって、「うん…」と上の空な返事しか出来なかった。