木槿のふたり (ページ16)

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45階のお隣さんページ16

「何階？」
「45階です」
「ここまで来たらもう、そうじゃないかと思った」
「え……？」

どういうことですか？と聞くよりも早く、押された45階のボタン。
押されたボタンはたった一つだけ。

もしかして…？いや、そんなわけ。

ポーンッ、と音がしてエレベーターが45階に到着すると、松本さんが私の後からエレベーターを降りた。

「よろしくね、お隣さん」
私の家の向かいのドアを指さす松本さん。

「いやーすごい偶然だよね」
「え？」
「このフロア２世帯しかないのに、まさかAが住んでるなんて」

う、嘘だーーー！
まさかの松本さんと同じフロアだなんて。
そんな偶然って…。

「引っ越してる感じもなかったから気が付かなかった！いつ越してきたの？」
「先週です、ここは知り合いに借りていて…」
「そうだったんだ、そりゃ気付かないな」
「なんか引っ越し蕎麦持ってご挨拶っていう雰囲気でもないかな…と思って、ご挨拶もせずすみません…」

こんなことなら、やっぱり事前にご挨拶しておけばよかった。くぅ～。

「全然。俺もあんまりした事ないし、気にしないで」
「すみません…」
「じゃ、これも何かの縁だしこれからよろしくね、ご近所さん！」
「こちらこそです、おやすみなさい」
「あは、おやすみ」

"ガチャン"

何となく松本さんの方のドアが閉まるのを待ってから、部屋に入る。

「ただいまぁ…」
誰もいない部屋に響く自分の声。

今日は色々ありすぎた。とりあえず、もう寝ちゃおう…。

そそくさと化粧を落として寝る準備をした私は、陽がのぼり明るくなった外の世界に反して、眠りについた。