闇の中へと誘うもの-2 ページ30
彼は、にこやかな微笑みを浮かべて話しかけてくる。
「君は、友人を護れる力が欲しい？」
「………無いよりは、あるほうが良い」
Aは、数秒の沈黙の後に、静かに答えた。
ハーマイオニーが石にされ、何もできない自分に無力感を感じている節があるのは、確かだった。力は、あるに越したことはない。
「もし君が、力を手に入れるための手段を選ばずにいられるなら、僕は力を貸せるかもしれない」
「(手段を、選ばずに？)」
リドルの言葉に、Aは眉を顰める。手段を選ばずにとはどういう意味なのか。選ばなかったら、如何なる手段がそこにはあるのか。
考えを巡らせ、辿り着いた結論を、彼女は口にした。
「つまりは、闇の魔術か」
「話が早くて助かるね」
リドルは爽やかに、彼女の結論を肯定。
Aは悩んだ。
実はAとしては、闇の魔術に対してそれ程、悪い印象を持っていない。「悪く使う輩が悪いだけで、闇の魔術が悪い訳ではない」というスタンスである(悪いのゲシュタルト崩壊は気にしないで頂きたい)。
故に彼女は、戸惑った。
「君には、闇の魔術を扱う高い素質がある。僕の手を取れ。そうすれば君を、必ず強くしてあげよう」
彼が真っ直ぐに、手を差し伸べてきたから。
ハーマイオニーを、金輪際、危険な目には遭わせたくない。今後、どんな危機に瀕しても、親友を護り続けたい。力がいる。
「(ああ、でも)」
迷って悩んで、Aは思った。
「(もしわたしが、闇の魔術を以てハーマイオニーを救ったとして。彼女は喜ぶのだろうか)」
いや、きっと喜ばない。正義感の強い大親友の少女は、喜んではくれない気がする。
「ごめん、リドル。あなたの提案は、受け入れられない」
結果として、Aはリドルの提案を断った。
彼は一気に不機嫌そうな表情になり、差し出した手を引っ込める。
「後悔しても知らないぞ」
「後悔するもんか」
負け惜しみに近い言葉を吐く彼に、Aは笑った。
「大切な友達を想って選んだことだ。後悔なんて、しないよ」
「…そう」
リドルは軽く舌打ちすると、フッと跡形も無く姿を消してしまった。
Aは何事もなかった顔で、ピアノの演奏に戻る。気持ちは不思議に、若干スッキリしていた。
友の存在が、彼女を光に踏み止まらせた。
闇に誘われた少女は、未だ危うさを残しながらも、今日も明るい光の下で生きている。
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☆りんりん♪(プロフ) - 鯉天さん» ありがとうございます！最近忙しさがヤバイですが、更新がんばります！ (2018年8月15日 0時) (
レス) id: bbc438c362 (このIDを非表示/違反報告)
鯉天(プロフ) - 前作も読みました！更新楽しみにしてます。頑張ってください！ (2018年8月14日 17時) (レス) id: 4ca258a6ba (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - 賢者の石も読ませてもらいました。とても面白いです！続きがとても気になります。 (2016年9月7日 0時) (レス) id: f2e1a1e1a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：☆りんりん♪ | 作成日時：2016年9月6日 22時
