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しばらく抱き合ったあと、ようやく紅明は収まったのか私を放してくれた。
少し……名残惜しいけど……うん、仕方ないわね。
このままじゃ話す事ができない。
「にしても、夜伽の格好でこの場に来るなど……」
じろじろとこちらを見る紅明の顔は、先程まで泣いていた弱々しい皇子には見えない。
むしろ、オス丸出しって感じね。
「この格好なら、誰かに見つかっても大丈夫だから……。
まさか亡くなった皇女が夜伽の格好をするなんて思いもしないでしょう?」
「えぇ、でも……昔言いましたよね?私だって男だと」
ギラギラと欲望に揺れるその目は紅炎殿を彷彿とさせた。
本当に似てなさそうで似ているんだから……。
クスッと思わず笑ってしまうと、紅明の視線が強くなった気がする。
「我慢、できませんか?」
そっと手を頬に伸ばせば、ゴクリと唾液を飲みこむ音が聞こえた。
そりゃそうよ、待てばかりを言われてきた身なんだから。
私だってそうできたらどれだけ開放されるだろう。
「っ……!」
彼の腕が今にもこちらに来そうなのが分かる。
でも我慢しなくてもいいなら、とっくに私は服なんて着てない。
「意地悪ですね……」
震える声に色を感じた。
「そんな事ないわ」
そういえば、彼は大きくため息をつく。
きっと紅明がどうするか、私には分かる。そして紅明も私を見透かしてる。
「今、貴方を無理に倒したって意味がないでしょう?」
あぁ、やっぱり……。
「うん……ごめんなさい」
ぽろっと出た涙はすぐに大粒に変わった。
紅明は賢い、だからその賢さに甘えてしまう。
今まで私が何をして、何を彼に強いてきたのか。思い返せば酷い事ばかり。
国を捨てた皇女、位をわきまえず身内を取った皇女、そして何より……。
慕ってくれる人を、例え一時だとしても離れるという決断をした。
「私はっ……皇女じゃない。ただの我がままな女だわ。
身内を優先し、今だって紅明を放置してる」
見透かされてるって、知ってる。
こんな奥底までもきっと紅明は分かってる。
そうじゃなかったら、こんな私を誰が慕うっていうの?
ユナンや龍翔殿から教えてもらった、人からの愛情の大事さ。
分かってからだから余計に今、私の心がズキズキと痛んだ。
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あすき(プロフ) - 今でも更新待ってます! (2020年9月29日 21時) (レス) id: a838b5fe09 (このIDを非表示/違反報告)
雑草と花(プロフ) - 紅明さんめちゃくちゃかっこいいです!更新楽しみにしてます! (2020年3月3日 9時) (レス) id: 157490c8f1 (このIDを非表示/違反報告)
エンジョイヌ(プロフ) - 更新が再開されるまで、待ってますね! コメントが二つに分かれて申し訳ないです…… これから応援させてください!お話書くのすごく時間かかるし大変なのは存じてます!それを承知の上で頑張れと応援させてください! しおり挟んで待ってます!( ̄^ ̄ゞ (2018年8月27日 0時) (レス) id: 6aa42b68c7 (このIDを非表示/違反報告)
エンジョイヌ(プロフ) - なんて素敵なとこで更新止めちゃってるんですか!!初めまして!私今日初めてこの作品を知って2時間もなしにぶっ通しでよみました!気がついたら最新話はまで来てました!それくらいこの作品は面白いです!もっとこの作品の続きが読みたいです!この作品の行先が読みたいです! (2018年8月27日 0時) (レス) id: 6aa42b68c7 (このIDを非表示/違反報告)
ウォリア(プロフ) - 黒瀬のんさん» ありがとうございます。更新頑張りますね! (2018年1月22日 18時) (レス) id: 286a4cd632 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水溶液 x他1人 | 作成日時:2016年12月14日 21時