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そっと姿を消して、目的の人物がいる部屋へと向かう。
多分、中から向かえばいくら夜伽の者でもとめられるわ。
とはいえ、その人が今現在夜伽の者の一緒にいればどちらにせよ撤退だけど……。
「確かこの辺りに……」
あぁ、ここだ。
こんな時間でも明かりが眩しいくらいについている。
夜伽の声も聞こえないという事は、今日も執務におわれているのかな。
そーっと近づき窓をノックする。
しかし、集中しているのか彼は全く気づかなかった。
仕方ない。
音魔法で中の空気を間接的に動かす。
ユナンは本当、こんな魔法まで教えてくれたから助かる。
「紅明」
なるべく彼の耳の近くでそう空気を振るわせる。
すると、がたんっと何かが落ちる物音がしたと思えば、きょろきょろと周りを見渡した。
あらら。あの慌てっぷりはすごい。
思わず笑ってしまいつつも、少しだけ涙が出てきた。
本当は……恋しいと思う事があった。
ダメだって思ってたけど、やっぱり貴方の姿を見るとこみ上げてしまう。
「紅明」
今度は窓のノックをしながらそういう。
すると彼はようやく気づいたのか、何も見えないはずの窓に寄ってきた。
ここまで近ければもう魔法を解いても大丈夫。
「紅明」
三度目にそう呼んだ時には私は窓越しに抱きしめられていた。
なんだか随分と逞しくなったと感じる。
七年も経ったのだから当然か。
「中に……入れて?」
懐かしい香りに包まれ、名残惜しいという気持ちが抑えきれない。
それでも紅明は急いで窓から身体をどけてくれた。
「……びっくりした?皇女が窓から登場だなんて」
へらっと笑えば、彼は今にも泣きそうな顔でこちらを見てくる。
そんな顔しないでよ。あーあ。抑えてたのに。
「まだ……思っててくれてるの?」
「当然じゃないですか……っ!」
また、抱きしめられた。今度は窓越しじゃないから身体と身体がよく密着する。
だから余計に彼の想いが伝わってきた。
「……あぁ、やっと。やっと帰ってきてくれた」
ポタっと自分の頬に涙の雫が落ちてくる。
顔なんて……見れないわね。
そんな資格はない。私が泣かしたんだから。
「傍に居てください。もうどこにも行かないでください」
縋り付く彼のその姿は大国の皇子の姿ではなく、ただの男でしかない。
私も……ただの女として貴方に抱きしめられたらどれだけ幸せになれたんだろう。
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あすき(プロフ) - 今でも更新待ってます! (2020年9月29日 21時) (レス) id: a838b5fe09 (このIDを非表示/違反報告)
雑草と花(プロフ) - 紅明さんめちゃくちゃかっこいいです!更新楽しみにしてます! (2020年3月3日 9時) (レス) id: 157490c8f1 (このIDを非表示/違反報告)
エンジョイヌ(プロフ) - 更新が再開されるまで、待ってますね! コメントが二つに分かれて申し訳ないです…… これから応援させてください!お話書くのすごく時間かかるし大変なのは存じてます!それを承知の上で頑張れと応援させてください! しおり挟んで待ってます!( ̄^ ̄ゞ (2018年8月27日 0時) (レス) id: 6aa42b68c7 (このIDを非表示/違反報告)
エンジョイヌ(プロフ) - なんて素敵なとこで更新止めちゃってるんですか!!初めまして!私今日初めてこの作品を知って2時間もなしにぶっ通しでよみました!気がついたら最新話はまで来てました!それくらいこの作品は面白いです!もっとこの作品の続きが読みたいです!この作品の行先が読みたいです! (2018年8月27日 0時) (レス) id: 6aa42b68c7 (このIDを非表示/違反報告)
ウォリア(プロフ) - 黒瀬のんさん» ありがとうございます。更新頑張りますね! (2018年1月22日 18時) (レス) id: 286a4cd632 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水溶液 x他1人 | 作成日時:2016年12月14日 21時