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忠雲に湯殿の準備を頼み、厨房へと向かう。
時計を見れば今は戌時(いぬどき)(現在でいう8時頃)。

多分、紅明が湯殿から戻るのは……戌一ツ時(いぬひとどき)(現在でいう8時40分頃)かしら。


「白A様、こんなところにどうなさりましたか?」


厨房に入ろうとすると、料理長が困ったような顔で私を見る。
それもそうだ。夜食には早いし、夕飯だとしてもわざわざ厨房に来たりしない。



「少し厨房を貸して欲してもらえますか?久しぶりに料理がしたくて……。
 あまり食器や食材は使わないし、場所もなるべく取らないから」


お願いするようにいうと、料理長は少し困ったような顔をしたが頷いてくれた。

それもそうね、事前に連絡の一つ入れていないから仕方ない。



「ありがとうございます」



礼いい、厨房へと案内される。

よかった、食材の場所や器具はそんなに変わっていない。



料理長は私の慣れた厨房での動きに少し驚いていたが、前々から働いていた者は私を見て笑顔で受け入れてくれた。

やっぱり、ここは活気があっていい。



「それにしても、白A様は何を作っておられるのですか?」



隣で明日の仕込みをする者が聞いてきた。



「蒸し鳥の梅肉和えと野菜スープよ。デザートの代わりにゆず茶を出そうかしらね」


蒸し器のささみの様子を見つつ、そう答える。

私と紅明の二人だから、あまり量もいらない。
それにささみはあまり食卓で並ばない品だから、コストがいい。

養母に教わるまで知らなかったなぁ……。
あの頃が懐かしい。



「手伝いましょうか?」

「いえ、貴方は貴方の仕事をしなさい。私にかまっていると料理長が怒るわよ」



笑いながらそういうと、その子は「それもそうですね」と笑って返してくれた。

こういう身分の違う者と話すのは大事な事だ。
向こうが謙遜したりして、あまり話が立たないのは立場上仕方ない。

けれど、仕方ないといってこちらが歩み寄らなければいつまでたっても仲良くなれない。


私には……私にできる事を。


気位の高い貴族は足元をすくわれる。
信頼関係こそ、大事な命綱だ。



「さて、そろそろ完成ね」


コトコトと煮込んだスープを小さな(かめ)に注ぐ。
ゆず茶のジャムも取ったし、これでいいかしらね。



「皿拭きをお願いします。料理長に使用食材のメモを書いたから渡しておいて」



そういって、私は料理を持って紅明の部屋へと向かった。

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水溶液(プロフ) - リンゴさん» ありがとうございます!少し話しがバラけて……最近、ようやく話の筋がまとまったのでこれからは今までよりも一生懸命頑張りますね! (2016年8月7日 0時) (レス) id: 286a4cd632 (このIDを非表示/違反報告)
リンゴ(プロフ) - 楽しく読まさせいていただいてます。更新頑張ってください (2016年8月6日 23時) (レス) id: 9f77e6e9ef (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水溶液 x他1人 | 作成日時:2016年7月28日 23時

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