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私の言葉に忠雲は驚いたようだった。
「大丈夫、代わりに言ってきます。それに紅炎殿から紅明殿の休暇の許可を頂きましたから」
肩に手を置き、そう話す。
きっと、従者としてそれだけ紅明の事を思っているのなら本心は休ませたいと思っているはずだ。
「……私は役に立たない従者です。居眠りをしていました」
「そうですか。ならばその居眠りを続けなさい」
そう言いつつ、忠雲の隣を通り紅明の部屋へと足を進めた。
相変わらず暗い部屋だ。
書簡が散らかって、空気が濁っているように感じる。
「誰ですか。忠雲には兄王様以外を部屋に入れるなと言いましたよ」
足音の違いで分かったのか、奥から紅明の声が聞こえた。
まるで威圧するような重音だ。
これは普通の家臣や官職なら逃げるでしょうね。
にしても、やっぱり忠雲に命じていたか。
「そう、じゃその兄王様に頼まれて来た私はかまわないでしょう?」
カツカツと進みながらそういう。
紅明はまさか私なんて思ってないでしょうね。
奥から大きな物音が聞こえた。
多分、驚いて書簡を落としたか、それとも椅子から落ちたのかしら。
「だ、ダメです!」
声色が代わり、焦っているのが分かる。
思わず笑ってしまった。
なぜ焦ってるんだろう。さっきまであんな重音を出していたのに。
「どうしてです?私は貴方の部屋で何年も仕事をしていましたよ」
とうとう奥の部屋につき、顔を出してそういう。
すると中には逃げるように端っこで固まる紅明がいた。
あーあ。なんて髪なのかしら。ボサボサで毛の塊のようになってるし。
服もあんな着崩れて……。
「ちょっ!来ないでくださいよ!!」
「だから、どうして?」
一向に理由を言わない紅明にため息がでる。
こっちだって理由を話してくれなきゃ分からない。
「……徹夜で湯に入ってないんです」
聞こえた声は小さく、恥ずかしげだった。
けれど、私は笑いを我慢できなかった。
だって、あれだけ一緒にいて紅明は徹夜で湯殿にいかない事など数え切れないくらいある。
何を今更……。
「なぜ笑ってるんですか」
「そりゃ笑うでしょう?貴方と私の仲ですよ。匂いなんて気にしなくてもいいじゃないですか」
あー笑った。
目に浮かんだ涙を指で擦る。
にしても、どうして紅明はそんな事を気にするんだろう。
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水溶液(プロフ) - リンゴさん» ありがとうございます!少し話しがバラけて……最近、ようやく話の筋がまとまったのでこれからは今までよりも一生懸命頑張りますね! (2016年8月7日 0時) (レス) id: 286a4cd632 (このIDを非表示/違反報告)
リンゴ(プロフ) - 楽しく読まさせいていただいてます。更新頑張ってください (2016年8月6日 23時) (レス) id: 9f77e6e9ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水溶液 x他1人 | 作成日時:2016年7月28日 23時