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式後の話は私には特に関係なく、そそくさと広間を出た。
今日で、紅炎殿が遠い存在になってしまったとつくづく感じる。
あの大きな椅子には、数年前まで兄上が座っていて、その周りを皆で立ったのを覚えている。
……懐かしい。
「白A殿」
廊下を歩いていると紅明が前から歩いてきた。
まだ終わったばかりなのに、ここにいてもいいのだろうか。
「式は大丈夫なのですか?」
「大丈夫ですよ。あれは兄王様の式であって私ではないですから」
なるほど。
それにしても……正装をすると一気にイメージが変わる。
癖のあの髪はそのままでも、服装がいつもの物と違ってきっちりしている。
あーあ。こんなに身長の差があれば前みたいにおぶって歩く事もできないわね。
「白A殿、少し話しませんか」
「?えぇ、いいけれど……」
「じゃ、来てください」
流石にいつものペースじゃ歩けない。
紅明の後を少しおぼつかないペースで歩いていると、どんどん距離が離れて行く。
あー、服を脱いでからにすればよかったなぁ……。
なんて思っていると床に小さな振動を感じる。
「そんな服装でよく歩き回るな」
ため息混じりのこの声は……。
「紅炎殿!」
今日の事もある、額づこうとすれば、ふと腕を取られた。
どういう事だろう。腕を取るなんて……。
「よせ、その格好で歩き回るのなら、誰かが支えなければならんだろう」
「そ、それなら紅明殿にしてもらいますのでっ!」
いけない、紅炎殿にこんな事を……。
無礼に決まっているし、せかっくの優しさでも困る。
「なぜ今紅明の名が出てくる」
「紅明殿と話をしに向かっていたところだったのです」
困ったなぁ……。腕が振りほどけない。
どうしよう……。
「何をしてるんです?」
聞こえた声は紅明の声。
驚いて見れば、走ったのか少し乱れた彼の姿がそこにあった。
「お前は……。そうか、そうだったな」
何を考えているのか全く分からない。
紅明を見たって真顔だし……。
何を納得されているんだろう。
しかも少し笑って……。
「ほら、白A。紅明に腕を借りろ。俺はそろそろ戻らなければならん。
……紅明、お前は意外とこういうのに鈍いな。身分の前に身の振り方を知れ」
そういって去る紅炎殿は、まだ少し笑っていた。
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水溶液(プロフ) - リンゴさん» ありがとうございます!少し話しがバラけて……最近、ようやく話の筋がまとまったのでこれからは今までよりも一生懸命頑張りますね! (2016年8月7日 0時) (レス) id: 286a4cd632 (このIDを非表示/違反報告)
リンゴ(プロフ) - 楽しく読まさせいていただいてます。更新頑張ってください (2016年8月6日 23時) (レス) id: 9f77e6e9ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水溶液 x他1人 | 作成日時:2016年7月28日 23時