【五条悟】ダーリン、ここでキスして

狂気は天才 ページ7

強い。



“最強”なんて言葉じゃ軽すぎるくらい。



稽古をつけてもらって2年。



それでも、一度もこの人から一本取った試しが無い。






『恵さぁ、最近心ここにあらずって感じだよね』






サングラスから覗く蒼い眼光が鋭く俺を射抜く。






『余計なこと考えてるなら、辞めるよ稽古』





この人が言ってる通り。



集中しようにも脳をチラついて離れない事がある。



俺には関係ないとわかっていながらも気になるのはクラスメイトのことだからなのか。



それとも、自分自身が気づいてないだけで彼女に気があるのか。



それを口にしてしまったら、この人も自分も彼女もどうなるのかわからない。





『Aのことでしょ』


『ッ？！』





図星を突かれて、自分でもわかるくらい動揺した。



そんな素振りは一切見せ無かったはずなのに。





『聞いて良いんですか』


『良いよ』





予想以上にあっけらかんとした態度の五条先生に思わず拍子抜けした。





『どんな関係なんですか』


『聞きたいことってそんなこと？』





あぁ、この人楽しんでる。



この状況で、俺の反応見て遊んでやがる。





『真面目に答えて下さい』


『僕はいたって真面目だよ』


『…浮気してんすか、Aと』





たまたま聞こえてしまった彼女と狗巻先輩の会話。



最初は、うどんとか蕎麦とか食べ物の話でもしてんだなくらいにしか思ってなかった。



わざわざ聞く耳立てる程の内容じゃ無いし、興味も無かった。



気づいたのは、体術訓練の時。



真希さんほどでは無いけど、体術センスもある彼女を相手に本気になってうっかり投げ飛ばした時、乱れた服の隙間から見えた“痣”。



それが何を意味するか、俺でもわかる。



彼女は何事も無かったように乱れた服を整えて〈恵くん、優しく無い〉なんて頬を膨らませてふざけていた。



それを見てから、彼女の“うどん”と“蕎麦”が何を意味するのかわかった。



そして気づいた。



彼女のあなたを見る目が完全に女であることに。





『僕はさ、浮気してるつもりは無いんだよね』


『は？』


『僕、最強だから何でもできちゃう訳』


『言ってる意味がわかりません』


『つまりは、2人の人間を同時に同じ愛情で愛せるってこと』




呪術師はイカれてる奴しかいない。


わかっていたけど、ここまでとは思って無かった。





『それで相手が傷ついたらどうするんですか』


『その時は、捨てるよ』

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