平穏な日々、夢中 (ページ3)

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第１０１章ページ3

ゾムside

俺はAの部屋で、眠り続けている彼女を眺めていた。
待ち続けてから一週間。
まだ、目を覚まさない。

仕事やら何やらすべて投げ出しているが、トントンも誰も咎めてこなかった。

点滴や輸血の管に繋がった彼女。
包帯やガーゼで肌を隠されている彼女。
前髪の下、目を包帯で覆った彼女。

微かな呼吸音が聞こえてくる。
それだけで安心するが、それがこんなにも続くとやはり不安だった。

「……」

初めて彼女を見つけたあの日。
血を流して倒れていた彼女を連れ帰ったあの日。

もしもあの時、見捨てていたら。
彼女がこの国に来なければ、こんなことにはならなかったのだろうか。
ふと考え、すぐに振り払う。
あのまま放っていたら恐らく捕まっていた。
だから、俺の行動は正しいはずなのに。

……どうしてこんなに彼女は傷ついてしまうのだろう。

・

季節は移り変わり、過ごしやすくなった秋。

Aはまだ起きない。

最近はオスマンが退屈そうにAの部屋に来ては紅茶を淹れていた。
時折話しかけたりもしている。
それに対する彼女の返事は無い。

・

数日後。

Aの傷の包帯やガーゼがほとんど取れた。
傷の酷かった脚や目元はまだそのまま。

でも、包帯が取れたことで、彼女の白い肌に浮かぶ幾つもの痣が目立って見える。
痛々しいその姿に目を伏せがちになってしまう。

視界に映った、彼女の手にそっと触れる。
……冷たい。
手の甲を包むように覆えば、俺の手の温度と彼女の温度が混ざって、どっちつかずの温度に感じられた。

と、ほんの少し。
僅かに。

彼女の手が動いた気がした。

「……! A?」

手を取って名前を呼びかける。
もう一度名前を呼べば、Aは顔を少し上げた。

髪が揺れる。
世界に色が戻る。

彼女の時間は再び動き出す。

『……ゾ…………ム?』

やっと、目を覚ました。