検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:10,473 hit

第100章 ページ2

No side


いつもそうだった。
彼はいつも、Aに関わるときは部屋に飛び込んでくる。

目の下にクマをつくっている彼の後ろには同じようにクマがあるトントンの姿もある。
城に残っていたはずのオスマンとロボロの姿は無い。
まだ彼らはやることが残っているのだろう。

グルッペンはうなだれるゾムの姿を見てさらに心配そうな表情になる。


「ゾム、Aは……!」

「……今しんぺい神が治療してくれとる。大丈夫、って言っとった」

「……そうか」


ゾムの言葉を聞いて少し安心したようになるグルッペンとトントン。
どれだけしんぺい神を信頼しているかがわかる。
しかし、トントンはまたすぐに顔を曇らせてしまう。

自分の補佐だからという理由もあるだろうが、何より、約束だ。
あの日から一度だって守れていない自分の不甲斐なさに、トントンは嫌気がさしていた。


「先程、ルンズェの城が落ちたとシャオロンから報告があった。皇帝は捕えてある」

「……そいつ、どうすんの」

「言わなくてもわかるだろう。それに、そうしなければお前は俺を殺すかもしれんからな」

「……」


否定しようとしたが、確かにそうかもしれないと言葉をのむ。
皇帝が今もまだ生きていると思うだけで怒りが込み上げてくるが……


「……A」


今は、目の前の不安でいっぱいだった。





同日昼過ぎ。
他の幹部達が全員医務室に集まり、Aの治療が終わるのを待っていた。

手術開始から九時間。
ついに奥からしんぺい神が姿を現した。
一斉に全員が立ち上がり、彼に問いかける。


「しんぺい神、Aは!?」

「うん、命に別状はないよ」


わかっていたとはいえ、その言葉で肩の荷が下りたように笑顔が戻る一同。


「でも、出血が酷いし……多分相当なストレスとかもあっただろうから、当分は目を覚まさないかも。それに……」


しんぺい神は言いずらそうに、重々しく口を開く。
それはAを最初に見つけた本人であるゾムと、ゾムから報告を受けたグルッペン、そして同じ場にいたトントンだけが知っていたこと。


「……目は、治せなかったよ」


それを聞いて他の幹部達は一瞬何のことかと考え、そして悟り、理解する。
彼女の視力が失われたことを。


彼らの行動は迅速だった。
だが。
それでも、手遅れだったのだ。



「Aが生きてるなら……それだけでいい」



様々な感情を押し殺し、そう呟いたグルッペンの言葉に、彼らは小さく頷いた。

第101章→←第九十九章



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (48 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
160人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

リノ(プロフ) - うじうじ抹茶さん» ありがとうございます……!!!頑張りますね!! (2017年12月10日 17時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
うじうじ抹茶(プロフ) - 良い話・・・。目から汗が出てきそうですわ。更新頑張って下さい! (2017年12月10日 15時) (レス) id: b6ff471b34 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:リノ | 作成日時:2017年10月21日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。