第100章 ページ2
No side
いつもそうだった。
彼はいつも、Aに関わるときは部屋に飛び込んでくる。
目の下にクマをつくっている彼の後ろには同じようにクマがあるトントンの姿もある。
城に残っていたはずのオスマンとロボロの姿は無い。
まだ彼らはやることが残っているのだろう。
グルッペンはうなだれるゾムの姿を見てさらに心配そうな表情になる。
「ゾム、Aは……!」
「……今しんぺい神が治療してくれとる。大丈夫、って言っとった」
「……そうか」
ゾムの言葉を聞いて少し安心したようになるグルッペンとトントン。
どれだけしんぺい神を信頼しているかがわかる。
しかし、トントンはまたすぐに顔を曇らせてしまう。
自分の補佐だからという理由もあるだろうが、何より、約束だ。
あの日から一度だって守れていない自分の不甲斐なさに、トントンは嫌気がさしていた。
「先程、ルンズェの城が落ちたとシャオロンから報告があった。皇帝は捕えてある」
「……そいつ、どうすんの」
「言わなくてもわかるだろう。それに、そうしなければお前は俺を殺すかもしれんからな」
「……」
否定しようとしたが、確かにそうかもしれないと言葉をのむ。
皇帝が今もまだ生きていると思うだけで怒りが込み上げてくるが……
「……A」
今は、目の前の不安でいっぱいだった。
・
同日昼過ぎ。
他の幹部達が全員医務室に集まり、Aの治療が終わるのを待っていた。
手術開始から九時間。
ついに奥からしんぺい神が姿を現した。
一斉に全員が立ち上がり、彼に問いかける。
「しんぺい神、Aは!?」
「うん、命に別状はないよ」
わかっていたとはいえ、その言葉で肩の荷が下りたように笑顔が戻る一同。
「でも、出血が酷いし……多分相当なストレスとかもあっただろうから、当分は目を覚まさないかも。それに……」
しんぺい神は言いずらそうに、重々しく口を開く。
それはAを最初に見つけた本人であるゾムと、ゾムから報告を受けたグルッペン、そして同じ場にいたトントンだけが知っていたこと。
「……目は、治せなかったよ」
それを聞いて他の幹部達は一瞬何のことかと考え、そして悟り、理解する。
彼女の視力が失われたことを。
彼らの行動は迅速だった。
だが。
それでも、手遅れだったのだ。
「Aが生きてるなら……それだけでいい」
様々な感情を押し殺し、そう呟いたグルッペンの言葉に、彼らは小さく頷いた。
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リノ(プロフ) - うじうじ抹茶さん» ありがとうございます……!!!頑張りますね!! (2017年12月10日 17時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
うじうじ抹茶(プロフ) - 良い話・・・。目から汗が出てきそうですわ。更新頑張って下さい! (2017年12月10日 15時) (レス) id: b6ff471b34 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リノ | 作成日時:2017年10月21日 13時