第六十二章 ページ12
ゾムside
ノック無しでトントンの部屋に駆け込む。
相変わらず机に向かっていた。
いつものように寝不足なのだろう。目付きが悪い。
「トントン!」
「なんや、飯ならいらんぞ」
俺イコール飯なんか。どんな認識やねん。
「違うんや、Aが熱出して倒れた!」
その言葉を聞いた瞬間トントンはペンを落として立ち上がった。
見たことないぐらい目を見開いて。
「ホンマに?」
「こんな嘘言うわけないやん。今はベッドに寝かせとる」
Aの居場所がわかるや否やトントンが部屋を飛び出す。
滅多に走らないトントンがあれだけ走っているのだからトントンにとってAがどれ程大切かがわかる。それは仕事の部下としてか、もしくは。
そこまで考えて、今はそれどころではないと俺もトントンの後を追う。
トントンはAの元に行く前に医務室によって、氷と水桶、タオルを準備していた。
薬を持っていかないのは容体がわからないからか。
あんだけ慌ててたのにこういう行動ができるのは流石だ。
俺だったらできない。
用意を終わらせ、また走り出す。
半開きになっている部屋のドアを押し開けて中に入る。
彼女は先程と変わらず苦しそうに横になっていた。
そこからはトントンの手元と彼女の顔を眺めるだけ。
……俺って情けないなぁ。
・
「グルッペンに知らせてくる」
トントンがそう言って部屋を出て行ってから数分。
部屋には俺とAの二人きり。
俺はベッドの横に置いた椅子に腰かけている。
ベッドには苦しそうなA。
やはり体調が悪い時には悪い夢でも見るのか、うなされている様にも見える。
安心させようと冷たいタオルの上から前髪辺りを撫でた。
さらさらと流れるように綺麗な髪が俺の指をすり抜けていく。
……昔の夢でも見とるんかな。
グルッペンから聞いた彼女の話。
戦争に巻き込まれて焼かれた故郷の話。
それを見ているのだとしたら、そりゃあうなされるな。
ぼうっと彼女を見つめ、心配しているとAが僅かに口を動かした。
「……!」
Aの事を知るためのヒントになるかもしれない。
少し緊張するが、彼女の口元に耳を近づける……。
息苦しそうな、吐息。
......聞こえるのは、それだけだった。
さすがにそう都合良くは聞こえないか。
もう一度Aの頭を撫でる。
その時、部屋の外からすごい勢いで足音が聞こえてくる。
「A‼」
勢いよく開かれたドアから血相を変えたグルッペンが飛び込んできた。
136人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リノ(プロフ) - 綾波夜見(自宅パソコン)さん» コメントありがとうございます。イラつく女を書くのは個人的に楽しかったです(笑)ありがとうございます!! (2017年9月29日 21時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
綾波夜見(自宅パソコン) - イラーナさんにものすごくイラつきました←そして、そんな女にプレゼントしている鬱先生にも← いつも楽しく読んでいます!!更新のほう、無理しない程度に頑張ってください!!応援してます!! (2017年9月29日 18時) (レス) id: 624c95f6b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:リノ | 作成日時:2017年9月6日 21時