第二十一章 ページ21
「君一人？」
急に話しかけられ、相手を確認するとそこそこ若い男の人が二人。
笑っているけど、どこか嘘臭さを感じる。
『い、いえ。友達を待ってるので……』
「えー、でももうこんな時間だし解散するでしょ？」
「夜は俺たちと遊ぼうぜ？」
解散も何も帰る場所一緒なんだけど。
それを言う前に、男のうち一人が私の手首を掴んだ。
グルッペンに掴まれた時には感じなかった嫌悪感が溢れてくる。
『や、やめてください』
「そんなこと言わずに、さ。退屈はさせないよ」
後退りしようとした私の行動を制限するようにもう一人の男が私の後ろに回って肩を掴んだ。
その力が私にはとても強く感じて、恐怖が大きくなる。
『やだ……っ』
「下向かないでよ〜もっとかわいい顔見せて？」
男が私の顎に手を置いて顔を上に向かす。
嫌でも見えてしまう男の顔。
その目が、私を追っていたあいつらの目のように見えて……
『……っ』
怖くて、涙が滲んできた。
「うはっ、涙目とかそそるわぁ」
気持ち悪い。
触らないでよ。
助けて……助けて…………ゾム。
「おい」
一筋の涙が私の頬を流れた時、待ち望んだ声が聞こえた。
男たちが不満そうにその声の方を見る。
私は誰だかわかっていたけど、安心したくてそちらを向く。
……そこにはやっぱり、ゾムがいた。
彼は少しだけ息が上がっていて、急いで来たのがわかる。
その理由が別にあったとしても、とても嬉しかった。
「なんだ？お前」
「邪魔すんな、帰れよ」
男たちはゾムの事を知らないのか、知っているがここにいるはずないと思ってるのか、強気に言葉を発し、ゾムを睨む。
だけど
「おまえら」
そんなちっぽけな敵意なんてゾムには敵わない。
「今すぐそいつからその汚ねぇ手を離せ」
ほとんど沈んだ日に照らされ、フードで影になった目元が赤く光り、男たちに向けられる。
それに加え、どこからか取り出したナイフが手に握られていた。
明らかな強い敵意と、殺意。
「ひぃっ」
それを浴びせられた男たちはたまらず逃げ出す。
辺りには、誰もいなくなっていた。
「A」
ゾムが私の名前を呼んだ。
私は助けてくれてありがとうって、面倒ごとに巻き込まれてごめんなさいって。
そう言おうとして口を開いた……けど。
『うぅ……っぁ』
出てきたのは嗚咽。
違うの、言いたいことは他にあるの。
もう少し待ってくれたら言えるから、ね。
「ごめんな」
私は優しい温もりに包まれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 189人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リノ(プロフ) - 本田大和さん、ありがとうございます！様！？私の妄想に共感して下って嬉しい限りですー！！ (2017年9月3日 17時) (
レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
本田大和(プロフ) - きゃあああーーーっ！！リノ様の文章力で妄想が止まりませんｗｗ これから誰と絡んでいくのか楽しみで仕方がありません(＊ﾟ∀ﾟ)ｂ (2017年9月3日 10時) (レス) id: ed9a366666 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - 夏海さん、ありがとうございます！嬉しいですー！私自身、最初読み間違えたんですよ（笑）、 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
夏海(プロフ) - 話のテンポがすごく好きです。そして「ボロボロさん」には草を禁じ得ない笑 (2017年8月30日 23時) (レス) id: 8f3bd46b36 (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - リホさん、ありがとうございます！ありがちな話ですけど楽しんでいただければ幸いです！ (2017年8月29日 10時) (レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リノ | 作成日時：2017年8月21日 13時
