第十三話：事の始まり怪奇譚 ページ14
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「じゃあそいつが」
倉庫にやって来た国木田は、ヤモリのように床に張り付いて眠る敦を見下ろした。
「うん。虎の能力者だ。変身してる間の記憶がなかったんだね」
「全く、次から事前に説明しろ。肝が冷えたぞ」
国木田は溜め息を吐くと、
其処には、こう書かれている。
“十五番街の西倉庫に虎が出る。
逃げられぬよう周囲を固めろ”
その紙切れは、茶屋で太宰が彼にこっそり渡したものだった。
「彼女は最初から気付いていたらしいけどねぇ」
「あの小娘も巻き込むな。あの小僧と偶然居合わせただけの一般人だろう」
「....それは如何かな」
意味ありげな含み笑いをする彼に、国木田は眉を顰める。
太宰が視線を向けると、近くの木箱に凭れ掛かって眠っているAの姿があった。
閉じた睫毛も、頬に掛かる髪も、眠り姫のようだ。
「兎に角...お蔭で非番の奴らまで駆り出す始末だ。皆に酒でも奢れ」
倉庫に、三人が入って来る。
「なンだ。怪我人は無しかい？つまんないねェ」
───与謝野晶子
能力名 『
「はっはっは、中々出来るようになったじゃないか。まぁ僕には及ばないけどね！」
───江戸川乱歩
能力名 『超推理』
「でもそのヒトどうするんです？自覚はなかったわけでしょ？」
───宮沢賢治
能力名 『雨ニモマケズ』
「どうする太宰？一応区の災害指定猛獣だぞ」
───国木田独歩
能力名 『独歩吟客』
「うふふ。実はもう決めてある」
───太宰治
能力名 『人間失格』
太宰は敦とAを交互に見ると、一度目を瞑る。
そして貼り付けたような薄っぺらい微笑で二人を指さして、口を開いた。
「
ぽかん、と太宰を除く四人が目を開いたまま静止する。
「はぁぁああぁ！？」
夜の街に、国木田の鋭い怒号が響き渡った。
───中島敦
能力名『月下獣』
これが事の始まり──────
怪奇ひしめくこの街で。
変人揃いの探偵社で。
これより始まる怪奇譚。
これが先触れ前兆し─────────
─────島崎A
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能力名 『破戒』
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作者名：椿 | 作成日時：2024年4月16日 20時
