Lesson：6 ページ6
.
一週間後。
今週最後の学校から帰った僕はリビングへ向かうと、そこにはテレビを見ながら楽しそうにしてる母さんの姿があった。
｢ただいま、母さん｣
｢おかえり優樹。……あっ、そうだ｣
ソファから腰を上げた母さんは、テーブルの上にあった封筒を手に取り、はいこれと僕に差し出した。
その封筒には｢藤本プロダクション｣と緑色の文字で印刷されていた。
｢優樹宛に来てたよ｣
｢……あー、あれか｣
事務所からくる封筒の心当たりなんて、例のオーディションの結果くらいしかないだろう。
一言お礼を言って二回の自室に入り、椅子に座ると封筒を丁寧に開けて１枚の書類を手にした。
両手で壊れやすい物を扱うかのように優しく持ち、書かれた文字を目に通す。
一番上に書かれた太い文字。『相川優樹様』と書かれたその下には――
｢――『合格』｣
口にしたその二文字を意味する文が、書かれていた。それを理解し、真っ先に思ったのは嬉しさよりも｢嘘だろ｣という驚き。
だって、あの審査員の中で最高権力者って、一番偉いのって……おばさんでは。そう考えて、その思考を振り払う様に頭をブンブンと振った。
｢優しい顔して怖いからな……。特に、仕事の事になると｣
小学生の時に、たまたまダンスを講師の方に教えて貰っていたらレッスン室におばさんが現われて、優しい声で凄く厳しい事を言われた記憶があるのだ。あの人は、子供相手にも容赦ない。
……と、なると。
｢実力、ってことかぁ｣
言葉にして、ジーンと胸に沁みて机へ身体を預ける。そのまま座ってるだけでは、嬉しさで身体を背もたれに預けて転んでしまいそうで。
なんだか、自分を認められた気がして嬉しさと恥ずかしさが一気にぶつかり合ったような感覚だ。
だが、いつまでもそれに浸っていられない。にやにやと緩んだ頬をパンッと叩き、両手で頬に紅葉を作った。そして、先程の書類に目を通す。
｢６月１１日、って明日か。明日の１３時に事務所に集合……。さっそく顔合わせ、って感じかな｣
そんな風になんとなく予想をつけて、僕は引き出しからノートとペンを取り出した。
――これからの、自分を固めないと。
合格という結果から、これから男の中で『男』として生きていく事がこれからの人生で決定された。
その中で、相川優樹という人間が『女』だという事を誰にも知られてはならないのだ。
そこで、僕は自分に守らなきゃいけない事を書き出すことにした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
林胡。(プロフ) - 猫田さん» コメントありがとうございます！不定期更新なためお待たせする事が多々あると思いますが、気長にお待ち頂けると嬉しいです (2017年8月22日 14時) (
レス) id: ebda197f1f (このIDを非表示/違反報告)
猫田 - めっちゃおもしろくて、続きが気になります！ 更新、頑張ってください！ (2017年8月19日 8時) (レス) id: 20c6f32d8a (このIDを非表示/違反報告)
林胡。(プロフ) - 天夜梨夢@梨璃とペアネ中さん» コメントありがとうございます！ 不定期更新なため、お待たせする事が多々あるかと思いますが気長にお付き合い頂けると嬉しいです。 (2017年8月8日 17時) (レス) id: ebda197f1f (このIDを非表示/違反報告)
天夜梨夢@梨璃とペアネ中(プロフ) - 面白いです！更新頑張ってください♪応援してます！ (2017年8月8日 15時) (レス) id: 3093d7cd0f (このIDを非表示/違反報告)
リト - 林胡。さん» 了解です(*^^*ゞ 待たせて頂きますよいつまでも← (2017年6月30日 15時) (レス) id: 806e39f599 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
