第52話「鞍瀬��」 ページ10
目を覚まさない三雲へ、酸素マスクから生きるための命繋ぎが送られる。
そんな静かな病室で香澄は話した。
「危険だと思ったわ。一時の感情のせいで入隊を決めるなんて、あとで後悔すると思ったから」
『……』
間違いはない。
三門市の人々を守る大事な仕事だからと言って、その大半は歳頃の子供だ。
未来があって、発展途上で、まだ命を懸けるには早すぎる年齢。
「けどこの子は曲がらなかったわ。ボーダーに入ったあとも、それはずっと変わってない」
それは、三雲が風間と戦っていた時の録画や雨取を守ろうとする姿勢を見た鞍瀬にも分かる事だった。
守るもののためには自分を惜しまない。
鞍瀬にとってそれは"分かったつもり"のものだが、香澄の話を聞く限りでは、それも事実なのだろう。
「何がそこまでこの子を動かしているのか、私には分からなくて」
傷ついた息子を前にすれば、誰だって二度と同じような目にあって欲しくないと考えるものだ。
今からでも遅くないと、引き戻したいのかもしれない。
( けどそれを三雲が望むとは思わない。たった1分程度の付き合いだけど、コイツはきっと無理をしたってまた強くなろうとする )
だから、鞍瀬は思うままを伝えてみることにした。
自分の言葉が香澄に届くかどうかではなく、今鞍瀬が三雲に対して思っていることを素直に。
『私にも三雲が何をしたいのかは分かりません。けど、少なくとも私はボーダーに入って良かったと思っています。
私にとって戦うことは「やれること」だから。
これは私のいち個人としての意見ですが、三雲にも三雲なりのやり方があるんだと思います。自分のためにも、守りたい何かのためにも』
( ……少し、クサいことを言いすぎたかもしれない )
香澄が黙っていることから鞍瀬は自分の発言を振り返る時間を得て、それを恥ずかしく思った。
それはそれは、今すぐその場から消えてしまいたいと思う程に。
「Aさん」
『えっ……あ、はい』
突然名前を呼ばれた鞍瀬は咄嗟に返事をして、その後丁寧に言い直す。
その後香澄が言った言葉は、鞍瀬の予想とは少し違った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 480人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒瀬(プロフ) - カナデさん» 返信遅くなりすみません！待って頂けたなんて凄く嬉しいです！ありがとうございます！頑張ります！ (3月3日 6時) (
レス) id: b8635cad8f (このIDを非表示/違反報告)
カナデ(プロフ) - 更新再開嬉しすぎます！頑張ってくださいー！！ (2月2日 2時) (レス) @page34 id: dcadc39e75 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - カナデさん» コメントありがとうございます！夢主ちゃんの言動は試行錯誤しているのでそう言って頂けると嬉しいです！更新頑張ります！ (2022年8月25日 6時) (レス) id: b8635cad8f (このIDを非表示/違反報告)
カナデ(プロフ) - この夢主ちゃんの性格めっちゃ好きです。これからも作品更新頑張ってください、応援してます。 (2022年8月24日 14時) (レス) @page22 id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - 夏目宮さん» 申し訳ありません。ご報告ありがとうございます。 (2022年6月10日 19時) (レス) id: b8635cad8f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒瀬 | 作成日時：2022年6月7日 0時
