【WT】レンタルトリガー 2

第49話「名前」 ページ7

『名前』





それは咄嗟に思いついたことで、何も深い意味は含んでいなかった。




「ん？」





『Aでいいです。年上に……それに貴方にちゃん付けされるの、鳥肌しかたたないので』






最後に悪態を付け足して、鞍瀬はそっぽを向いた。





決して「呼び捨てにしてほしい」なんて言うはずでは無かったが、話題が少なすぎた鞍瀬には自分のことを言うしか選択肢が見つからなかった。







「……あははっ、そっかそっか。分かった。じゃあこれからはAって呼ぶよ」





ぐしゃぐしゃと頭を撫でながら、迅は鞍瀬の提案を飲んだ。






病院にいるためそこまで丁寧にセットはされていなかったものの、


手入れを怠らずに育てたきめ細かで絹糸のような自分の髪の毛が、他人に容赦なく触られることに嫌悪感を覚えた鞍瀬は直ぐにその手を振り払った。





『ちょ、やめてください。分かりましたから』





「その代わりおれの事も迅ってちゃんと呼んでくれない？いつも「貴方」とか二人称ばっかだからさ」





『そうでしたか？呼んだことはありますけど、
そうですね。じゃあこれからは"ちゃんと"迅さんと呼ばせてもらいます』





「うん」





そう二人の間によく分からない関係性が生まれたところで、迅は前々から思ってたことを口にした。





「それにしてもAってさ、かなり切り替え早いよね。おれが未来伝えた時も、自分がここまで大怪我した今も」







『ああ、そうですね。








……あれです、私、中学生の頃ラグビーをちょっとかじってたんで。そのおかげですよきっと』



「多分それは関係ないと思うけど、そうなんだ」






適当丸出しの回答に迅は苦笑しながらツッコミを入れた。





この何日か後に上層部所属の唐沢から同じようなことを言われる未来は、迅にはまだ視えていないらしい。

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