第70話「酔い褒め」 ページ28
それから諏訪は「凄かったなあれ!」と真正面から褒めてくるため、ひねくれた性格の鞍瀬はかなりのやりにくさを感じていた。
それを見越した烏丸が話題を上手く変えて、無事運ばれてきた肉を焼くとこにまで話を持っていった。
『ありがとう』
「いや。けど褒め慣れてないのは驚いたな。お前くらい才能あって頭も良ければ褒められることなんて日常茶飯事なんじゃないか?」
『別に、褒めてくれるくらい私に関心がある人がいないから断り方を知らなかっただけだけど』
そう言ってすぐ、鞍瀬は焼けた肉に甘ダレとレモンをつけて白米と共に口を運んだ。
だがその場にいた烏丸、風間、寺島、諏訪、木崎は鞍瀬の発言に何も言えない妙な空気を感じていた。
『なに、折角奢りなのに食べないの。烏丸』
「あ、いや、食べる」
鞍瀬自身は自分の発言が普通であると認識しているため、何故烏丸達が硬直したのかが分かっていない。
そしてそれが分かったのか酔っていて発言に責任が伴わない風間がビールを一気飲みして机に頭をぶつけ、「お前は」と鞍瀬に話し掛けた。
「判断力もあって動きがサッパリしている。最初は真正面からとつげきしてく攻撃手のようだと思っていたがC級のランク戦を見たかぎりだと援護もうまい。連携もしやすい万能型だ。だれと組ませても文句は言われないだろう。
既にB級中位、作戦や立ち回りが上手く行けばB級上位、A級とだって互角にわたりあえる。おまえはすごい。入隊1ヶ月程でこれは本当にすごいことだ」
その呂律の回らない酔いながらの褒め言葉は、鞍瀬の頭を麻痺させるには充分だった。
『え?いや、は?え?』
普段風間は鞍瀬から見てしかるべき時しかるべき分だけ褒める、というような制限ありきの人物だった。
だが今日は上限なく褒めてくる。これは最早彼女にとっては褒められ地獄である。
「その辺にしてやれ風間。鞍瀬の頭がパンクする」
そしてそんな鞍瀬に救いの手を差し伸べたのは、意外にも木崎だった。
意外とは言っても、諏訪は腹を抱えながら爆笑し、寺島は声を押し殺して失笑、烏丸は風間に乗っかるように鞍瀬に褒め追い討ちをかけていた。
つまり、木崎以外は全員笑いと悪ノリで鞍瀬を救える者はいなかったわけだ。
「うるさいぞきざき。おれは鞍瀬を評価してるんだ」
「わかった。家まで送ってやるからお前もう寝ろ」
その日鞍瀬は、木崎がこの輪にいる時一番苦労する人間だということを知った。
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黒瀬(プロフ) - カナデさん» 返信遅くなりすみません!待って頂けたなんて凄く嬉しいです!ありがとうございます!頑張ります! (3月3日 6時) (レス) id: b8635cad8f (このIDを非表示/違反報告)
カナデ(プロフ) - 更新再開嬉しすぎます!頑張ってくださいー!! (2月2日 2時) (レス) @page34 id: dcadc39e75 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - カナデさん» コメントありがとうございます!夢主ちゃんの言動は試行錯誤しているのでそう言って頂けると嬉しいです!更新頑張ります! (2022年8月25日 6時) (レス) id: b8635cad8f (このIDを非表示/違反報告)
カナデ(プロフ) - この夢主ちゃんの性格めっちゃ好きです。これからも作品更新頑張ってください、応援してます。 (2022年8月24日 14時) (レス) @page22 id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - 夏目宮さん» 申し訳ありません。ご報告ありがとうございます。 (2022年6月10日 19時) (レス) id: b8635cad8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒瀬 | 作成日時:2022年6月7日 0時